2019年11月14日、北朝鮮情勢の研究における世界的権威であるアンドレイ・ランコフ教授が、衝撃的とも言える分析を明らかにしました。金一族による世襲統治が続く限り、北朝鮮がいかなる条件下でも核兵器を手放すことはないというのです。SNS上では「やはり独裁体制の維持には核が不可欠なのか」「リビアやイラクの末路を見れば納得せざるを得ない」といった、冷徹な現実を突きつけられたユーザーたちの反応が相次いでいます。
なぜ彼らはこれほどまでに核に固執するのでしょうか。その背景には、過去に核を放棄したり、持たなかったりした国々の悲劇的な末路があります。かつてイスラエルからの攻撃を受けて核開発を断念したイラクのフセイン政権は、その後に崩壊し、指導者は処刑されました。また、核放棄の代わりに領土の安全を約束されたはずのウクライナはロシアにクリミアを併合され、民主化を機に核を捨てたリビアのカダフィ大佐も凄惨な死を遂げたのです。
こうした国際社会の「約束」が守られない現実を、北朝鮮の指導部は冷徹に見つめています。彼らにとって核兵器は、単なる武器ではなく、金体制の安全を物理的に保証する唯一無二の「生命保険」なのです。私自身の見解としても、自国の独裁体制が崩壊した瞬間に自分たちの命が危うくなることを理解している彼らが、紙切れ一枚の外交文書を信じて核を捨てるなど、およそ考えにくい選択だと言わざるを得ません。
トランプ大統領という「予測不能な脅威」への警戒心
それでも金正恩委員長がトランプ大統領との首脳会談に応じたのは、彼がこれまでの米大統領とは異なり、本気で軍事力を行使しかねない「怖さ」を持っていたからです。従来、北朝鮮はソウル周辺に住む2500万人の市民を実質的な人質とすることで米国の攻撃を抑止してきました。しかし、同盟国への配慮を二の次にするトランプ氏の特異なキャラクターが、北朝鮮側に「本当に先制攻撃されるかもしれない」という切実な恐怖を抱かせたのでしょう。
現在の北朝鮮の狙いは、完全な非核化ではなく、段階的な譲歩を引き出すことにあります。例えば、寧辺(ニョンビョン)などの一部の核施設を廃棄する見返りに、経済制裁を緩和させるという取引です。ここで言う「制裁」とは、国連安全保障理事会が北朝鮮の核開発を止めるために課した、輸出入の制限などの経済的な罰則を指します。彼らはこうした小さな譲歩を積み重ね、最終的には「事実上の核保有国」として世界に認められる道を探っているのです。
一方で、足元の経済状況は中国からの支援によって一定の安定を見せています。2019年6月に習近平国家主席が平壌を訪問して以降、食糧や原油の援助が再開されたことで、北朝鮮は米国との交渉を急ぐ必要がなくなりました。今春から繰り返されている短距離弾道ミサイルの発射実験は、米国が譲歩しないのであればこちらも座視しないという、彼らなりの強気なメッセージであると解釈できます。
しかし、この駆け引きには常に一触即発の危うさがつきまといます。米国への過度な挑発が先制攻撃を招くという警戒心から、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射や核実験の凍結は維持される見通しですが、事態が膠着すればさらなる強硬手段に出る可能性も否定できません。ランコフ教授の指摘通り、核放棄の意志がない以上、我々は今後もこの危うい軍事バランスと向き合い続ける必要があるのでしょう。
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