精密機器業界において、自社の主力事業を象徴する「顔」として世界的なスポーツスターを起用する動きが加速しています。2019年10月16日現在、OKI(沖電気工業)やエプソンといった国内大手メーカーが、持ち前の技術力に華やかなネームバリューを掛け合わせ、市場での認知度を一気に高めようと勝負に出ているのです。
SNS上では、Jリーグのヴィッセル神戸で活躍するアンドレス・イニエスタ選手や、NBAの伝説的センターであるシャキール・オニール氏の登場に、「まさかのキャスティング!」「製品のイメージが変わった」と驚きの声が広がっています。一見すると接点の薄そうなスポーツと精密機器ですが、そこには緻密なブランディング戦略が隠されているのでしょう。
イニエスタの「神判断」をエッジコンピューティングに重ねるOKIの狙い
OKIは、ブランドアンバサダーにイニエスタ選手を迎え、次世代技術である「エッジコンピューティング」の普及に力を入れています。この技術は、ネットワークの末端(エッジ)でデータを瞬時に処理する仕組みを指します。クラウドにデータを送るタイムラグを省けるため、リアルタイム性が求められるAI解析や自動運転などへの活用が期待される注目の分野です。
2019年10月に開催された戦略発表会で、イニエスタ選手は「サッカーではコンマ1秒以下の素早い決断が求められる」と語りました。彼の卓越した判断力と、OKIが推進する高速な情報処理技術を重ね合わせることで、目に見えにくい先端技術を直感的に伝えようとしています。これは、従来の「堅実なインフラ企業」というイメージを刷新する大きな挑戦といえるでしょう。
私個人の視点としても、複雑なIT用語を並べるより、一流アスリートの直感的なプレーに例える手法は、一般層への浸透において非常に賢明な選択だと感じます。労働力不足やインフラ老朽化といった社会課題に対し、OKIが「スピード感」を持って立ち向かう姿勢が、スターの起用によってより鮮明に浮き彫りになっているのではないでしょうか。
北米市場を席巻せよ!エプソンが放つ「シャック」のインパクト
一方、セイコーエプソンは北米市場のシェア拡大を狙い、NBAのスターだった「シャック」ことシャキール・オニール氏を広告に起用しました。コミカルなダンスを披露する動画では、インクカートリッジ交換の手間を省く「大容量インクタンク」搭載プリンターを強力にアピールしています。強力なライバルがひしめく米国で、存在感を放つための大胆な一手です。
エプソンがターゲットに据えるのは、在宅勤務や小規模事務所を指す「SOHO(ソーホー)」層です。彼らにとって、頻繁なインク交換は業務効率を下げる大きな悩みとなります。シャックの圧倒的な親しみやすさとインパクトを借りることで、「製品力は高いが認知度が低い」という課題を一気に突破しようとする同社の熱意が伝わってきます。
富士フイルムがテイラー・スウィフト氏を起用して「チェキ」を世界的にヒットさせた前例もあり、スターの影響力はもはや無視できない武器です。技術志向が強い精密メーカーが、あえて「個人の魅力」を前面に出すこのトレンドは、機能の差別化が難しくなった現代において、顧客の心を掴むための正攻法へと進化していくに違いありません。
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