茨城県つくば市が描く未来の青写真が、大きな注目を集めています。2019年5月30日、同市はまちづくりの根本的な指針となる「つくば市未来構想」の中間とりまとめ案を、市議会の全員協議会にて提示いたしました。この構想は、市の最上位計画として、21世紀半ばまでを計画期間とし、つくば市が目指す理念や将来像を定めるものです。
特に話題を呼んでいるのは、人口の将来展望です。市は、2048年にはつくば市の人口が現状からおよそ3割増加し、約29万人に達するとの見通しを公表しています。これは、2015年に発表された前回の想定(2036年に約26万人)と比較して、人口増加の規模が拡大し、その達成時期も先送りされた上方修正となります。この挑戦的な数字の根拠として、つくばエクスプレス(TX)沿線に広がる開発地区の定着率を、従来の70%から75%~85%へと引き上げた点が挙げられます。
また、少子化が社会問題となる中で、合計特殊出生率が30年には1.8へ、さらに40年には2.1へと、現状の1.43から向上するという攻めの仮定に基づいて推計されている点も、今回の構想の大きな特徴です。合計特殊出生率とは、一人の女性が一生の間に産む子どもの平均人数を示す指標です。これが2.1程度であれば、人口が長期的に維持される水準と言われています。市は、この社会増と自然増の組み合わせで、力強い人口増加を目指していると言えるでしょう。
人口増と裏腹の深刻な財政課題
しかし、人口増加という明るい予測の裏側には、乗り越えるべき財政的な課題が横たわっています。未来構想では、財政の将来展望についても言及されており、高齢化の進展に伴う扶助費(高齢者や障害者などへの生活支援にかかる費用)の増加などにより、2035年度には市の歳出が歳入を上回る財政赤字に陥る可能性があると推測されています。そして、2050年度の歳出額は1,088億円と、2017年度から約3割増える見込みです。
この人口の将来展望について、市議会の全員協議会では、議員から「大変挑戦的な数字。それをやるだけの覚悟はどうなのか」といった、厳しい意見や疑問の声が相次ぎました。単に数字を積み上げるだけでなく、その実現に向けた具体的な戦略と財源確保が強く求められているのです。
会議終了後の記者会見で、五十嵐立青市長は「財政は単に人口が増えるだけでは赤字になってしまう」と、この課題を正面から認めました。その上で、「産業振興など、税収をきちんと確保するための取り組みが必須である」と力強く述べ、市の財政基盤強化への強い決意を示しました。
コラムニストの視点:挑戦を成功させる鍵は経済戦略
このつくば市の「未来構想」中間案は、科学の街として知られる同市の、未来への強い意志を反映したものと評価できます。人口の増加を見込むことは、都市の活力を維持し、地域経済を活性化させるための強力なエンジンとなるに違いありません。この挑戦的な数字は、TXというインフラ整備を背景に、研究学園都市としてのポテンシャルを最大限に引き出そうとする意図が読み取れるからです。
しかし、市長も指摘するように、人口が増えれば万事解決という単純な話ではありません。高齢化に伴う社会保障費の増加は、全国の自治体にとって共通の課題です。つくば市がこの未来構想を成功させるためには、「挑戦的な人口増」を実現すると同時に、それを支える「強固な財政基盤」を確立する、二正面作戦が必要となります。具体的には、税収に直結する高付加価値な産業の誘致や育成、そして市民一人ひとりが経済活動に積極的に参加できるような環境整備、すなわち産業振興こそが、この挑戦の成否を分ける鍵となるでしょう。
SNS上でもこの話題は「つくばの進化に期待!」「人口増は嬉しいけど、本当に大丈夫?財政が心配」といった、期待と懸念が入り混じる反響を呼んでいるようです。未来構想の実現に向けた具体的な施策、すなわち2020年度から2024年度の「つくば市戦略プラン」の策定と、その実行力に、今後さらに注目が集まることは間違いないでしょう。
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