プロ野球界において、解説者や指導者の「教えたい欲」を激しく刺激する才能豊かな若手選手が稀に現れます。現在、阪神タイガースで大きな注目を集めている2年目のサウスポー、高橋遥人投手もその輝ける原石のひとりでしょう。2019年11月の秋季キャンプでは、中日のレジェンドである山本昌臨時コーチを心酔させるほどのポテンシャルを見せつけました。
通常、指導者が熱心に目をかける投手といえば、驚異的な球速を持ちながら制球難に苦しむタイプが一般的です。しかし、24歳を迎えた高橋投手は、自己最速152キロを計測する力強い真っ直ぐを武器にしながらも、決して「ノーコン」と揶揄されるような荒っぽさはありません。むしろ、その卓越した資質ゆえの課題が、周囲の期待をさらに高めているのです。
SNS上では、彼の投球に対して「ストレートのキレが異次元」「見ていてワクワクする左腕」といった絶賛の声が溢れる一方で、勝負どころでの配球を不安視する意見も少なくありません。高橋投手は右バッターの内角を果敢に攻める投球を好みますが、その強気な姿勢が裏目に出ると、単調な攻めに終始してしまう場面がこれまでに散見されました。
レジェンドから授かった「緩急」という名の武器
正捕手を務める梅野隆太郎選手のリードも非常に攻撃的であるため、二人の波長が噛み合えば無双するものの、一度狂いが生じると別人のように打ち込まれる脆さもありました。本来は低めに集めてゴロを打たせる術に長けているはずですが、力押しに頼りすぎるあまり、首脳陣が思わずため息を漏らすような展開も2019年のシーズン中には見られました。
そこで救世主となったのが、現役時代にスクリューボールを武器に長く活躍した山本昌氏です。「スクリュー」とは、左投手が投じる際に右打者の外角へ逃げながら沈む変化球のことで、習得には指先の繊細な感覚が求められます。山本氏は高橋投手に対し、強気の内角攻めを活かすためにも、あえて「逃げる緩い球」を積極的に混ぜるよう助言しました。
「緩い球を投げるには勇気がいる」とは、かつての智将・星野仙一氏の言葉ですが、打者のタイミングを外す投球術は、一線級の打線を封じるために不可欠な要素です。高橋投手もチェンジアップを所持していますが、これまではフォームの癖を見抜かれることが多く、2019年シーズンの3勝9敗という数字は、こうした課題を象徴しています。
しかし、山本氏からボールの握りや配球の妙を直接伝授されたことで、高橋投手はこれまでにない手応えを感じているようです。2020年春のキャンプでは、この「緩急自在の投球」を完全に自分のものにすることが最大のテーマとなるでしょう。能見篤史投手の後継者として、ファンからの期待はかつてないほどに高まっています。
長年チームを支えたメッセンジャー投手が引退し、2020年シーズンの開幕投手争いは大きな注目を集めています。西勇輝投手が筆頭候補と目されていますが、矢野燿大監督は若手の台頭を強く切望しています。新魔球を武器に生まれ変わった高橋投手が、伝統の一戦でマウンドに立つ姿を、多くの虎党が夢見ているに違いありません。
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