東北の玄関口、仙台を起点とした移動のあり方が今、劇的な進化を遂げようとしています。2019年12月01日、JR東日本仙台支社は次世代の移動サービスを形にする専門組織「MaaS(マース)推進室」を立ち上げました。わずか4名の精鋭チームによるスタートですが、彼らが背負う期待は極めて大きく、地域交通の概念を根底から覆す可能性を秘めているのです。
そもそも「MaaS」とは、「Mobility as a Service」の頭文字を取った言葉です。これは、鉄道やバス、タクシー、さらにはシェアサイクルに至るまで、運営主体の異なる複数の交通手段を、スマートフォンのアプリ一つで予約から決済まで完結させる仕組みを指します。個別の乗り物を利用するのではなく、「移動」そのものを一つのサービスとして捉える画期的な考え方だと言えるでしょう。
ネット上では、この新部署設立に対して「ようやく東北にも未来が来た」「スマホ一つで観光地をスムーズに回れるのは助かる」といった期待の声が数多く上がっています。一方で、地方特有の公共交通機関の少なさを懸念し、「まずはバスの利便性を上げてほしい」という切実な要望も見受けられました。こうしたユーザーの生の声こそが、今後のサービス開発のカギを握るに違いありません。
2021年の大型キャンペーンを見据えた戦略的展開
今回の推進室設立の大きな目標は、2021年に東北6県で展開される「デスティネーションキャンペーン(DC)」での本格的な運用です。DCはJRグループと自治体が一体となって行う国内最大級の観光イベントであり、そこで仙台都市圏を中心とした利便性の高い移動システムを披露しようとしています。観光客が迷うことなく、宮城の魅力を隅々まで満喫できる環境作りが急ピッチで進められています。
対象エリアは仙台市に留まらず、歴史ある塩釜市や松島町、さらに名取市や岩沼市、富谷市といった周辺自治体まで幅広く想定されています。特筆すべきは、観光客だけをターゲットにしているわけではない点です。地域に暮らす住民にとっても、日常生活の足として機能する仕組みを検討している点は、地方創生の観点からも非常に高く評価できるポイントではないでしょうか。
編集者としての私見ですが、MaaSの真価は「移動の心理的ハードル」を下げることにあります。特に観光地では「どのバスに乗ればいいのか分からない」という不安が付きまといますが、デジタル技術でこれが解消されれば、消費の活性化にも繋がります。JR東日本がこれまで築いてきた強固なインフラに、デジタルの柔軟性が加わることで、東北の観光ポテンシャルは最大限に引き出されるはずです。
会津での成功体験を糧に広がるネットワーク
この取り組みの土台となっているのは、福島県の会津地域での実績です。2019年03月に福島県や会津若松市と包括連携協定を結んだのを皮切りに、同年11月には11もの市町村を巻き込んだ大規模な実証実験が行われました。専用のスマホアプリを使い、最適な乗り換え案内やおすすめの周遊ルートを提示する試みは、旅行者の回遊性を高める確かな手応えを残しています。
会津での知見を仙台都市圏へどう移植し、発展させていくのかが今後の焦点となるでしょう。4人という少人数の推進室が、いかにして多くの自治体や交通事業者との調整をまとめ上げるのか、その手腕が問われています。単なる技術導入に終わらず、地元のバス会社やタクシー業者と「共生」するモデルを構築することが、持続可能な交通網を維持するための必須条件となります。
SNSでは「実証実験だけで終わらせず、早く日常使いしたい」という、サービスの定着を望む声が目立ちます。最新技術を駆使したMaaSは、少子高齢化が進む地方都市において、移動の権利を守るための希望の光となるでしょう。2021年の本格始動に向けて、JR東日本仙台支社がどのような「新しい旅の形」を提示してくれるのか、期待に胸が膨らみます。
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