北海道から北東へ約1500キロメートル、雄大な火山と美しい海に抱かれた「カムチャツカ半島」が、いま新たな観光のフロンティアとして熱い視線を浴びています。2019年12月06日現在、この地では手つかずの自然を活かしたダイナミックな観光開発が急ピッチで進行中です。夏はマリンスポーツや登山、冬は良質なパウダースノーでのスキーや温泉と、四季折々の魅力が凝縮されています。
カムチャツカ開発公社のリリア・クラフチュク副局長は、2027年までに年間観光客数を100万人に引き上げるという壮大な野心を掲げています。同公社が関与するプロジェクトだけでも120件に及び、高級ホテルや大型クルーズ港の建設が次々と計画されています。特に未開拓の日本人観光客への期待は高く、インバウンドの多角化を目指す彼らにとって、隣接する北海道は極めて重要なパートナーなのです。
SNS上でも「カムチャツカの火山と温泉は一生に一度は見たい」「北海道から数時間で行けるなら魅力的」といった好意的な反応が目立っています。こうした期待を受け、北海道経済同友会の有志たちは2018年に現地調査を実施しました。北海道を中継地点、いわゆる「ハブ」として機能させ、訪日客を空路や海路でカムチャツカへ送り出すオプショナルツアーの構築が、真剣に議論され始めています。
最短2時間でつながる秘境への空路と海路
北海道からカムチャツカへのフライト時間は、わずか2時間から3時間程度に過ぎません。2019年06月には地域航空会社であるフジドリームエアラインズ(FDA)との意見交換会も行われ、コスト面や大手との競合など、実現に向けた具体的なハードルの整理が進んでいます。軍港としての歴史が長かった分、荒らされていない大自然が残っている点は、富裕層を惹きつける強力な武器になるはずです。
北海道大学大学院の石井吉春客員教授は、富裕層をターゲットにした戦略の実現性に太鼓判を押しています。互いに客を送り合う「相互送客」の形が理想的であり、単なる観光地としての連携を超えた、経済的な相乗効果が期待されています。実際、2018年のカムチャツカ訪問者は20万人を突破し、前年比で50%増という驚異的な成長を遂げており、そのポテンシャルの高さは疑いようがありません。
北極海航路が切り拓く北海道の物流革命
観光の連携に加え、もう一つの重要な鍵を握るのが「北極海航路」の存在です。これは、温暖化や砕氷技術(氷を割りながら進む技術)の進歩により、北極圏を通過して欧州とアジアを結ぶ新しい海の道です。ロシア政府は2030年までに貨物量を6500万トンまで拡大する計画を立てており、一年中凍らない良港を持つカムチャツカは、この巨大な物流網の寄港地として不可欠な存在となっています。
北海道側もこの動きに呼応しています。苫小牧港や釧路港を北極海航路の重要拠点にしようと、2019年10月には苫小牧港管理組合が欧州から木材を輸入する実証実験をスタートさせました。さらに道内の小売業者も、涼しい北極海を通ることで品質劣化を防げる「欧州産ワイン」の輸入に関心を寄せています。輸送コストの大幅な削減は、私たちの生活にも大きな恩恵をもたらすでしょう。
個人的には、この連携こそが北海道を「日本の端」から「世界の中心」へと変えるパラダイムシフトになると確信しています。もちろん、環境への配慮や砕氷船の運用コストといった課題は残されていますが、北大北極域研究センターの大塚夏彦教授が指摘するように、北海道が港湾開発の資材供給基地になる可能性も秘めています。観光と物流の両輪で、北への航路がいま、力強く動き出そうとしています。
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