世界中の名だたるリーダーが集結する「世界経営者会議」において、ベンチャー支援の第一線で活躍するWiLの共同創業者兼CEO、伊佐山元氏が日本のスタートアップが直面する現状と未来への処方箋を語りました。2019年11月18日現在、世界的な低金利を背景に、投資家から新興企業へ流れ込む資金はかつてないほどの勢いを見せています。しかし、その潤沢なマネーの裏側で、経営者たちは忍び寄る景気後退の足音に敏感に反応し始めているようです。
伊佐山氏のもとには、日米問わず「今は新規株式公開、いわゆるIPOを急ぐべきか」という切実な相談が相次いでいます。IPOとは、未上場の企業が証券取引所に株式を上場させ、誰でも自由に売買できるようにすることです。景気の先行きが不透明な今、あえて1年から2年ほど上場の時期を遅らせ、その間の運営資金をいかに確保するかという戦略的な「守り」の姿勢が、スタートアップ経営の新たなスタンダードになりつつあることが伺えます。
SNS上では、シェアオフィス大手ウィーカンパニーの上場撤回騒動を受け、「成長至上主義の終焉か」と危惧する声が多く聞かれます。伊佐山氏もこの点に触れ、これまでの「赤字でも成長さえしていれば良い」という甘い風潮に警鐘を鳴らしています。今後は、健全な組織運営ができているかをチェックする「ガバナンス(企業統治)」が、投資判断の極めて重要な指標となるでしょう。投資家の目は、より厳格に経営の質を問うものへと変化しています。
日本から「ユニコーン企業」が生まれにくい構造的課題
日本において、評価額が10億ドルを超える未上場企業「ユニコーン」が米国に比べて圧倒的に少ないのはなぜでしょうか。伊佐山氏は、意外にも「上場のハードルの低さ」を最大の問題点として挙げています。日本では売上高が10億円規模でも上場が可能ですが、米国では最低でも100億円規模の売上がなければ上場の土俵にすら上がれません。この規模の差が、そのまま企業価値の差となり、世界で戦える巨人が育たない要因となっているのです。
さらに、日本のスタートアップが国内市場という「心地よい井戸」の中に安住してしまっている点も見逃せません。インターネットを通じて世界が繋がっている現代において、最初からグローバル市場をターゲットに据えなければ、海外投資家からの熱い視線を浴びることは困難です。言葉の壁や文化の違いを乗り越え、多様な価値観を取り入れる姿勢こそが、今の日本の経営者に求められている勇気ある一歩だと言えるのではないでしょうか。
個人的な見解を申し上げれば、日本企業には「真面目なモノづくり」の精神が息づいていますが、それだけでは勝てない時代です。伊佐山氏が指摘するように、外国人や女性が活躍するダイバーシティ(多様性)あふれる組織へと変革し、世界標準のガバナンスを確立することが不可欠です。小さな成功で満足せず、世界を驚かせるような壮大なビジョンを掲げる経営者が一人でも多く現れることを、メディアの立場からも強く期待しています。
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