2019年12月3日から4日にかけて、イギリスのロンドンで北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議が開催されます。1949年の創設から70周年という輝かしい節目を迎えた2019年ですが、お祝いムード一色とはいかないのが現状です。SNS上でも「かつてないほど足並みが乱れているのではないか」といった懸念の声が相次いでおり、今回の会議は、深まってしまった同盟国間の亀裂をどのように修復できるかを探る、極めて重要な場となるでしょう。
そもそもNATOとは、アメリカやカナダ、そしてフランスやドイツといった欧州諸国の計29カ国で構成される軍事同盟を指します。加盟国が攻撃を受けた際に、全加盟国で反撃する「集団的自衛権」を中核としており、西側諸国の安全保障において長年、守護神のような役割を果たしてきました。しかし、近年はこの「連帯」に大きな陰りが見え始めています。その発端の一つとなったのが、アメリカのトランプ大統領による強硬な姿勢であることは否定できません。
2018年7月の前回会議で、トランプ氏は加盟国の国防支出が低すぎると不満を爆発させました。特にドイツを名指しで批判し、国内総生産(GDP)比2%という目標達成が2030年代にずれ込む見通しであることを「不公平だ」と断じたのです。NATOにおける国防支出とは、自国の軍事予算のことですが、同盟内では応分の負担が求められます。この唐突な要求は欧州側に不信感という種をまき、現在の不協和音へとつながる直接的な引き金となりました。
マクロン氏の「脳死」発言が波紋を呼ぶ欧州のジレンマ
こうした中、2019年11月上旬にはフランスのマクロン大統領が、インタビューで「NATOは脳死状態にある」と述べ、世界に衝撃を与えました。この「脳死」という表現は、加盟国間での意思疎通が欠如し、戦略的な調整が全く機能していない現状を痛烈に皮肉ったものです。マクロン氏は、米国の中東政策の不透明さから、もはやアメリカだけに頼ることはできないと考え、欧州独自で軍事的な独立性を高めるべきだという持論を強くにじませました。
背景には、2019年10月にアメリカがシリア北東部からの撤退を一方的に表明したことへの憤りがあります。フランスなどへの事前通告がないままの撤退は、同じNATO加盟国であるトルコによるシリア攻撃を招く結果となりました。他国の反対を押し切ったトルコの行動は、同盟の結束を内部から崩壊させる事態となっています。編集者の私としては、共通の敵を前に団結すべき同盟内で、これほどまでにリーダーシップが不在な状況は非常に危ういと感じざるを得ません。
一方で、すべての国がフランスと同調しているわけではありません。ドイツのメルケル首相は2019年11月27日、欧州が独力で身を守ることは現時点では不可能であると断言しました。ロシアの脅威を直接感じるポーランドなどの東欧諸国にとっても、NATOの存在は不可欠です。内部で言い争っている間にも、安保環境は刻一刻と変化しています。今回の会議では、従来の「陸・海・空」に加えて、軍事利用が進む「宇宙」を作戦領域として認める方針です。
さらに、これまでの仮想敵であったロシアに加え、急速に勢力を拡大する中国への対応も大きな焦点となるでしょう。ストルテンベルグ事務総長は、中国の台頭が安全保障に与える影響を精査すべきだと警鐘を鳴らしています。今回のロンドン会議で、NATOが有識者会議の設置などの改革案を打ち出し、再び一つの方向に進み始めることができるのか。70年という歴史を背負った同盟が、その真価を問われる瞬間がいよいよ目前に迫っています。
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