世界を揺るがす米中貿易摩擦の渦中にありながら、日本のハイテク産業の雄、東京エレクトロンは極めて強気な姿勢を崩していません。同社の常石哲男会長は2019年12月1日までの取材に対し、半導体市場の先行きについて非常に前向きな展望を語ってくださいました。足元の業績こそ一時的な調整局面にあるものの、次なる飛躍の足音は確実に近づいているようです。
2020年3月期は、売上高が前の期に比べて1割強、純利益は3割強も減少するという厳しい見通しが立っています。しかし常石会長は、2021年3月期の前半には業績が本格的な回復軌道に乗ると確信しています。SNS上では「半導体の底打ちは近いのか」「やはり日本メーカーの技術力に期待したい」といった、投資家や技術ファンからの熱い視線が注がれています。
5G普及とデータセンターが牽引する「演算処理用半導体」の未来
今回の回復シナリオの主役となるのは、スマホやPCの頭脳にあたる「演算処理用半導体(ロジック半導体)」と、情報を記憶する「メモリー半導体」の両輪です。特に次世代通信規格である「5G」の商用化が進むことで、膨大なデータを高速で処理する必要が生じます。これに伴い、データセンターへの設備投資が再び活発化することは、業界にとって大きな追い風となるでしょう。
常石会長は、かつての空前絶後の好景気だった2018年の水準にメモリー需要が戻るには、まだ2、3年はかかると冷静に分析しています。しかし、それを補って余りあるのが中国市場の底力です。中国の半導体メーカーは、世界的な市況の変動に左右されることなく、国策として猛烈な勢いで投資を継続しており、これが東京エレクトロンの装置需要を強力に支えています。
米中摩擦を跳ね返す「技術力」という最強の武器
多くの企業が米中貿易摩擦の長期化を懸念していますが、常石会長の視座は一段高いところにあります。摩擦そのものが半導体需要の本質的な成長を止めることはないと断言されました。世界が必要とする半導体の総量が増え続ける限り、どこかの国で誰かが必ず投資を行うからです。重要なのは、どこの国のメーカーも欲しがる「世界トップレベルの製造装置」を作り続けることです。
私は、この「技術こそが地政学リスクを超える」という確固たる信念に深く感銘を受けました。政治的な対立を嘆くのではなく、圧倒的な製品力で中国市場においても米国の競合他社に競り勝とうとする姿勢こそ、日本企業が目指すべき理想像ではないでしょうか。同社は中期経営計画で掲げる売上高1兆5000億円を通過点とし、さらにその先の2兆円という巨大な目標を見据えています。
今後、中国向け売上高の比率はさらに高まっていくと予想されます。半導体はもはや産業のコメを超えた「戦略物資」ですが、その製造に不可欠な装置を握る東京エレクトロンの存在感は、2021年に向けてさらに増していくに違いありません。時代の変化を恐れず、王道の成長戦略を突き進む同社の動向から、これからも目が離せません。
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