最近、テレビのニュースやSNSで「街中にイノシシが現れた」という驚きの映像を目にする機会が増えていると感じませんか。環境省が発表した最新の推計データによれば、2017年度における全国のイノシシの個体数は約87万頭にものぼることが判明しました。これは、調査を開始した1989年度の約24万頭という数字と比較すると、わずか30年ほどで3倍以上に膨れ上がっている計算になります。
2010年度に記録した約114万頭というピーク時からは減少傾向にあるものの、依然としてその数は膨大であり、私たちの生活圏への浸透は深刻さを増しています。ネット上では「昔は山で見かけるものだったのに、今では住宅街を走っている」といった、生息域の変化に対する戸惑いや恐怖の声が相次いで寄せられているのです。こうした事態を受け、もはや対岸の火事ではないという認識が急速に広がっています。
深刻化する農業被害と新たな「感染症」の懸念
イノシシの増加がもたらす影響は、単に「遭遇して怖い」という感情的な問題に留まりません。農林水産省の報告によると、2018年度における農作物の被害額は約47億円という驚くべき規模に達しました。これは野生鳥獣による被害総額の約3割を占めるもので、丹精込めて育てられたイネや果樹が食い荒らされる現状は、日本の農業の根幹を揺るがす死活問題となっているのです。
さらに、近年では「CSF(豚熱)」という豚の感染症を媒介する存在としても厳しい目が向けられています。CSFとは、かつて「豚コレラ」と呼ばれていた非常に感染力が強い病気で、家畜の豚に感染すれば甚大な経済的損失を招く恐れがあるものです。イノシシが山を越え、里に下りてくることで、このウイルスが拡散されるリスクが高まっているため、防疫の観点からもその動向が警戒されています。
終わりの見えない捕獲作戦とその課題
こうした状況を打破するため、政府も巨額の予算を投じて対策を講じています。環境省は2019年度、自治体の捕獲活動を支援するために年間16億円もの補助金を用意しました。実際、2018年度には全国で約60万頭という膨大な数のイノシシが捕獲されましたが、それでも根本的な解決には至っていません。その理由は、イノシシが持つ非常に強力な「繁殖力」に隠されているのでしょう。
一頭のメスが一度に多くの子を産むため、どれだけ捕獲を進めても個体数を減らすには気の遠くなるような時間が必要だと予測されます。私個人の見解としては、単なる個体数調整だけでなく、人間の生活圏と野生動物の境界線を再定義するような、より包括的な「共生と分離」の戦略が求められる時期に来ているのではないでしょうか。テクノロジーを駆使した最新の防護策と、現場での地道な活動の両立が、今まさに試されています。
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