たった一枚の布が、一瞬にして華やかなボレロや帽子へと姿を変える様子を想像できるでしょうか。デザイナーの岩瀬恵理さんが手掛ける「popupdress(ポップアップドレス)」は、まさにそんな魔法のような体験を私たちに届けてくれます。2019年12月11日、この革新的なファッションアイテムが注目を集めている理由は、その驚くべき変幻自在ぶりにあります。SNS上でも「着こなしの概念が変わる」「まるで手品を見ているみたい」と、驚きと称賛の声が広がっているのです。
このドレスの最大の秘密は、山形県米沢市で織り上げられた上質な絹織物「タフタ」にあります。タフタとは、独特の光沢と程よい張り感が特徴の平織り生地のことです。これを2枚重ねて輪の形に仕立て、その内側にリボンを通すという独創的な構造を採用しました。リボンをキュッと引くだけで、軽やかな素材が美しく波打ち、瞬時に大小さまざまなフリルが姿を現します。このシンプルな仕掛けが、女性の装いに劇的な変化をもたらすのです。
大人になっても忘れない「フリルへの憧れ」を形に
ラインナップも実に多彩で、シルクのフリンジを贅沢にあしらった重厚感のあるモデルから、ナイロンワッシャー素材で陰影を表現したものまで展開されています。中でも、生地を斜めに裁断する「バイアス」という技法を用いた2色使いのシリーズ「PALETTE」は、2019年度のグッドデザイン賞に輝きました。空気を孕んだようなふんわりとしたボリューム感は、身に纏うだけで心まで軽やかになります。デザイン性と機能美の両立が、高く評価された証といえるでしょう。
岩瀬さんは、多くの女性が幼い頃に抱いていたリボンやフリルへの憧憬を大切にされています。大人になるにつれて少し距離を置いてしまいがちなフリルですが、百貨店の店頭で実際に試着したお客様は、一瞬で少女のような輝く笑顔を取り戻すそうです。私自身、ファッションとは単なる衣服ではなく、忘れていた自分自身のときめきを再発見するための「装置」であるべきだと強く感じます。彼女の作品は、まさにその役割を完璧に果たしているのです。
師弟の絆から生まれる、サステナブルな未来の装い
この素晴らしい製品の背景には、岩瀬さんが長年築いてきた教育現場での「対話」があります。服飾専門学校での教え子である室井健氏と共に開発に挑み、信頼する卒業生たちの確かな縫製技術によって形にされました。また、制作過程で出るタフタの端切れを教材として活用し、学生たちに伝統技術の継承を伝える活動も行っています。絹の色彩に触れた学生たちが、端切れを編んで新しい布を生み出す様子は、未来のファッション界への希望を感じさせます。
「輪の形はゼロに似ている」と語る岩瀬さんの言葉通り、このドレスは原点に立ち返りながら、自由な自己表現を叶えてくれます。三宅一生氏などの巨匠のもとで研鑽を積み、2013年に「エチュードゥマン」を起業した彼女の歩みは、常に布との真摯な向き合いの中にありました。一つの輪から無限の可能性が広がる「ポップアップドレス」は、私たちの日常に優雅な革命を起こしてくれるに違いありません。伝統と革新が織りなすこの物語を、ぜひその身で体感してほしいです。
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