次世代の高速通信規格「5G」をめぐり、日本の税制が歴史的な転換点を迎えています。2019年12月12日、政府・与党は5Gの通信網整備を加速させるため、投資額の15%を法人税から差し引くという、極めて手厚い税制優遇措置を導入することを決定しました。当初、自民党税制調査会の内部では9%という案でまとまりかけていましたが、安倍晋三首相の「低すぎる」という一言が、流れを大きく変えることになったのです。
今回の決定の背景には、単なる景気対策を超えた「経済安全保障」という切実な課題が存在します。経済安全保障とは、国家の安全を経済の側面から守る考え方です。現在、圧倒的な低価格を武器に、中国のファーウェイ(華為技術)などの通信機器が世界シェアを席巻しています。もし日本のインフラが安価な中国製ばかりになれば、情報の機密保持やサイバー攻撃への耐性に深刻なリスクが生じかねないという危機感が、政権内で高まっていました。
安倍首相は2019年12月9日の記者会見にて、5G整備を「国家百年の計」と表現し、安全保障の観点からその重要性を強調されています。SNS上でも「国産ベンダーの育成は急務だ」「安かろう悪かろうでは国の通信は守れない」といった、政府の強気な姿勢を支持する声が目立っています。これまで、利益を上げている大手携帯キャリアへの優遇には慎重な意見もありましたが、ハイテク分野での米中覇権争いが激化する中、もはや猶予はないとの判断が下された形です。
「脂汗をかいて調整せよ」首相の強い意志が動かした逆転劇
実は、この15%という数字にたどり着くまでには激しい攻防がありました。当初、税調幹部や財務省の間では、5%から9%程度が妥当という声が根強く、デジタル分野特有の省庁間の縦割り意識も議論の障壁となっていました。しかし、安倍首相は「5G分野での1年の遅れは致命的になる」と断言し、関係各省に対して「汗ではなく『脂汗』をかきながら必死に調整してほしい」と異例の激を飛ばしたと伝えられています。
現在の世界シェアを見ると、ファーウェイが約30%を占める一方で、日本のNECや富士通はわずか1%以下に留まっています。スウェーデンのエリクソンやフィンランドのノキアも強敵ですが、中国製はそれらよりもさらに安価です。15%という高い控除率を設定しなければ、高価でも安全性が高いとされる日本製や欧米製を企業が選ぶ動機付けとしては不十分であり、今回の措置はまさに日本の通信基地局メーカーを育てるための「呼び水」と言えるでしょう。
私は、今回の税制改正は非常に理にかなった攻めの姿勢だと評価しています。これまでの税制は「公平性」ばかりが重視されがちでしたが、これからは国家戦略として「どの技術を守るか」を明確に打ち出す必要があります。アメリカが安全保障上の懸念から中国製排除を加速させる中、同盟国である日本が歩調を合わせることは、国際社会への強いメッセージにもなります。この果敢な投資支援が、日本のデジタル競争力を再び世界レベルへ押し上げる一歩になることを期待して止みません。
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