日本の文房具業界を代表する大手メーカー同士が、老舗筆記具メーカー「ぺんてる」を巡って激しい火花を散らしています。文具王者のコクヨは2019年12月11日、当初設定していた株式の買い付け期限を過ぎた後も、株主からの要望があれば個別の取得相談に継続して応じる方針を公式サイトで発表しました。一見すると事務的な報告ですが、その裏側には何としても目標を達成したいという執念が垣間見えるでしょう。
今回の騒動の鍵となる「株式公開買い付け(TOB)」とは、あらかじめ価格や期間を提示して、不特定多数の株主から市場を通さずに株を買い集める手法を指します。コクヨは2019年12月9日を期限として、1株あたり4200円という条件で買い付けを実施していました。しかし、翌10日の時点では目標としていた過半数の確保には至っておらず、戦況は当初の想定よりも厳しい局面を迎えているようです。
コクヨ側の説明によれば、現時点で100名を超える株主から売却の応募があったとのことですが、具体的な最終取得数については集計が終わるまで伏せられたままです。2019年12月9日の消印有効分までをカウントするため、精査に時間を要しているのが現状でしょう。現在、コクヨはぺんてる株の37.8%を保有していますが、支配権を握るために必要な「過半数」という壁は、想像以上に高いものだったのかもしれません。
救世主プラスの参戦とSNSで広がるファンの困惑
この状況をさらに複雑にしているのが、ぺんてる経営陣が「ホワイトナイト」として招き入れたプラスの存在です。ホワイトナイトとは、敵対的な買収を仕掛けられた企業を救うために現れる「白馬の騎士」のような友好的な買収者のことを言います。プラスもまた、2019年12月10日の期限終了後も、株主からの申し出があれば株式取得を検討する姿勢を崩しておらず、両社による異例の「延長戦」へと突入しました。
SNS上では、この文具大手3社による三つ巴の争いに対し、「子供の頃から愛用しているぺんてるが、企業の論理で振り回されるのは悲しい」といったファンの切実な声や、「コクヨとプラスのどちらが勝っても、日本の文具の質が落ちないでほしい」という懸念が広がっています。企業のブランド力や技術力が、こうした資本の論理によって変質してしまうことを、ユーザーは敏感に察知し、不安視しているのではないでしょうか。
私個人の意見としては、企業規模の拡大を狙うコクヨの戦略も理解できますが、ぺんてるが築き上げてきた独自の技術や文化が損なわれることは避けるべきだと強く感じます。単なる数字の取り合いではなく、最終的にはユーザーに素晴らしい筆記体験を提供し続けられる形に落ち着くことを願ってやみません。果たしてこの争奪戦はどのような結末を迎えるのか、日本の文具業界の未来を左右する大きな転換点になることは間違いなさそうです。
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