広済堂の株争奪戦が再燃か?創業者親族の株売却で加速するTOB合戦の思惑と投資家の熱い視線

2019年11月19日、印刷業界の老舗である広済堂の株価が急騰し、一時前日比4%高の774円を記録しました。これは実に7カ月ぶりの高値水準であり、市場には期待と緊張が入り混じった独特の空気が漂っています。投資家の心を揺さぶったのは、創業者親族である桜井美江氏が前日の2019年11月18日に発表した、保有株の一部売却というニュースでした。

SNS上では「広済堂に再び大きな波が来るのではないか」「第2ラウンドの開始か」といった期待を込めた投稿が相次いでいます。そもそも広済堂は、経営陣が参加して自社を買収する「MBO」や、外部からの「TOB(株式公開買い付け)」の舞台となってきました。2019年1月には米ベインキャピタルと組んだMBOが計画されましたが、価格の妥当性を巡って村上世彰氏側の参戦を招き、結果として買収劇は複雑化の一途を辿ったのです。

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新たな勢力図の出現とマネーゲームの行方

今回の発表によれば、桜井氏は保有していた約9.7%の株式のうち、4%分をラオックスの羅怡文社長へ譲渡しました。これにより、ラオックス陣営の合計保有比率は16%に達し、旧村上ファンド系の約13%を上回る筆頭勢力へと躍り出た計算になります。有力な投資家たちの間で株式が移動したことで、市場では「再びTOBの価格吊り上げ合戦が始まるのではないか」という思惑が、国内証券会社などを中心に急速に広がっています。

ここで言う「TOB」とは、特定の企業の経営権を得るために、価格と期間を公表して市場外で株を買い集める手法を指します。買い手同士が競い合えば、提示価格はどんどん跳ね上がるため、既存の株主にとっては大きな利益を得るチャンスとなるでしょう。こうしたマネーゲームの側面が、2019年3月下旬に記録した年初来高値860円を再び更新するのではないか、という期待を煽っているのです。

しかし、投資家として冷静に見るべき点も存在します。広済堂の2020年3月期の業績予想は最終黒字を見込んではいるものの、利益水準はわずか5億円強に留まっており、全盛期の6分の1という厳しい状況です。株価が利益の何倍まで買われているかを示す「PER(株価収益率)」は約35倍に達しており、同業他社の水準と比較しても、現在の株価は「実力」以上に「期待」で買われていると言わざるを得ません。

筆者の視点としては、広済堂は単なる印刷会社ではなく、今や「投資家たちの思惑の戦場」と化しているように映ります。資産価値や経営権を巡る争いは、時に企業の本来の価値を置き去りにして加速するものです。SNSでの盛り上がりに乗るのも一つの手ですが、松井証券の専門家が指摘するように、価格変動の激しさを意味する「ボラティリティ」が非常に高くなっている点には、細心の注意を払うべきではないでしょうか。

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