自動車業界に押し寄せる電動化の波のなかで、老舗メーカーが大きな賭けに出ました。カーエアコン用コンプレッサーで世界的なシェアを誇るサンデンホールディングス(HD)が、電気自動車(EV)向け部品メーカーへの劇的な転換を加速させています。同社は2019年12月13日までに、モーター大手の日本電産と共同でEV向け「熱管理システム」の開発に乗り出すことを明らかにしました。
今回の提携で注目されるのは、EVの心臓部ともいえるモーターと、電流の性質を変換して回転数を制御する装置「インバーター」の冷却技術です。一般的にモーターは80度、インバーターは50度が理想的な動作温度とされています。この温度管理が適切でないと、出力が低下して加速が鈍るだけでなく、貴重な電力を無駄に消費してしまいます。SNSでは「日本電産とのタッグは最強すぎる」「地味だけど熱対策こそEVの命」といった期待の声が寄せられています。
航続距離を伸ばす「総合熱マネジメント」の衝撃
サンデンHDが目指すのは、単なる部品供給にとどまらない「総合熱マネジメントサプライヤー」という新境地です。長年培ってきた空調技術を応用し、水や冷媒を循環させる配管を通じて熱を効率的に吸収する仕組みを構築します。これにより電池の消耗を抑え、ユーザーが最も気にする「航続距離」を飛躍的に伸ばせる可能性があります。西勝也社長が2019年11月の決算説明会で語った「自ら変化を生み出す」という言葉には、強い覚悟が滲んでいます。
さらに同社の挑戦はモーター冷却だけではありません。リチウムイオン電池の熱を逃がすシステムの開発も進んでおり、2019年6月に米国で開催されたEVレースでは、従来品と比較して電池の温度上昇を4割以下に抑えるという驚異的な成果を叩き出しました。こうした実績が積み上がることで、2022年の市場投入に向けた期待感はますます高まっています。まさに、空調で培った「冷やす技術」がEV時代の標準を握ろうとしているのです。
しかし、この変革の裏には厳しい現実も横たわっています。欧州の排ガス規制や米中貿易摩擦の影響により、従来の主力であるエンジン車向け部品の需要が急減しているからです。2020年3月期の業績予想は大幅な減収減益を見込んでおり、2023年度までに全世界で従業員の2割にあたる2,400人を削減するという断腸の改革も断行します。編集者としては、この痛みを伴う構造改革こそが、次世代の覇権を握るための避けて通れない試練であると感じます。
「EVになっても我々の部品はなくならない」という西社長の宣言は、技術への絶対的な自信の表れでしょう。内燃機関からモーターへ、主役が変わる激動の時代において、サンデンHDが日本電産という強力なパートナーと共に描く未来図は、日本のものづくりの意地を見せてくれるはずです。今は耐え忍ぶ時期かもしれませんが、2022年の製品発売を機に、同社がEV市場の主役へと躍り出る瞬間が今から待ち遠しくてなりません。
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