2019年12月13日、乗り物ファンを熱狂させる数々の名車両を支えるプロフェッショナルの姿が注目を集めています。箱根の湖面を彩る「クイーン芦ノ湖」や、池袋の街を軽快に駆け抜ける赤い「イケバス」など、私たちが思わずカメラを向けたくなる華麗な内外装。これらを一手に引き受けているのが、北九州市に拠点を置く「九州艤装」という精鋭チームなのです。
社名にある「艤装(ぎそう)」とは、船や車両の本体に座席や内装、電気系統などの装備品を取り付ける重要な工程を指す専門用語です。2018年1月11日に設立されたばかりの若い会社ですが、その実力は折り紙付きでしょう。わずか4人の社員で構成される「職人集団」でありながら、全国各地から注文が絶えないその理由は、圧倒的な技術力と柔軟な対応力にあります。
SNS上では「あの素敵な内装は、実は北九州の職人さんが作っていたのか!」といった驚きの声や、「一回は乗ってみたい憧れの列車ばかり」という称賛のコメントが溢れています。大手メーカーが効率を重視した大量生産を得意とする一方で、九州艤装は世界に一つだけの「一発もの」と呼ばれる特殊な車両施工において、比類なき強みを発揮しているのです。
デザイナーの理想を現実に変える緻密な職人技
磯辺謙一社長は、20年以上にわたり車両の改造や補修に情熱を注いできた人物です。かつてJR九州の観光列車も担当した経験を持つ彼は、著名なデザイナーである水戸岡鋭治氏からも厚い信頼を寄せられています。デザイン画という理想を、限られたスペースの中で寸分違わず形にする作業は、まさにパズルを解くような緻密さが求められる仕事ではないでしょうか。
特に驚くべきは、2020年春の運行開始を控える「ウエストエクスプレス銀河」でのエピソードです。急遽舞い込んだ依頼に対し、通常では考えられない「1ヶ月で1両を仕上げる」という過酷なスケジュールを完遂しました。この迅速な仕事ぶりには、発注元であるJR西日本も驚きを隠せなかったといいます。これこそが、少数精鋭だからこそ成し遂げられるチームワークの結晶です。
観光列車の内装には、美しい木工細工や繊細な織物といった伝統工芸品が多用されます。しかし、公共交通機関である以上、見た目の美しさだけでなく、火災に強い「難燃性」や、多くの乗客が利用しても壊れない「耐久性」といった厳しい基準をクリアしなければなりません。こうした相反する要素を高い次元で両立させる知識と判断力こそが、彼らの真骨頂と言えます。
私は、こうした「地方の小さな企業が世界を驚かせる技術を持つ」という構図に、日本のモノづくりの希望を感じます。自社で巨大な設備を持たず、信頼できる協力会社と連携して付加価値の高い作業に集中するビジネスモデルは、非常に合理的です。2020年5月期には売上高2億円弱を見込んでおり、新工場の設立や採用強化など、さらなる飛躍が期待されるでしょう。
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