2019年12月13日、日本の労働環境における多様性のあり方を問い直す大きな転換点が訪れました。性同一性障害を抱える経済産業省の職員が、職場での女性トイレ使用を不当に制限されたとして国を訴えていた裁判で、東京地裁は「使用制限は違法」との画期的な判決を下したのです。このニュースはSNSでも瞬く間に拡散され、「ようやく時代が動き出した」「誰もが自分らしく働ける環境が当たり前になってほしい」といった応援の声が相次いでいます。
そもそも性同一性障害とは、自分の心で自認している性別と、身体的な性別が一致しないために、日常生活や社会生活で多大な苦痛を感じる状態を指す専門用語です。今回の判決は、単なる一職員の訴えを超えて、すべての企業に対して「個人の尊厳を守る重要性」を強く示唆したものと言えるでしょう。これを受けて、民間企業の間ではLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)の当事者が心地よく過ごせるオフィスづくりが急ピッチで進んでいます。
先進企業が取り組む「多様性」への具体的なアプローチ
日本IBMでは、早くも2015年から本社の改装に合わせて、全てのフロアに男女共用の多目的トイレを完備しました。これは当事者社員が参加するコミュニティからの切実な要望を反映したもので、対話を重視する姿勢が人材確保にもつながっているようです。一方、JR東日本も2020年5月から女性用制服のスカートを廃止し、デザインを男女共通に統一することを決定しました。制服という目に見える形での「性別の固定観念」を払拭する動きは、社会全体に大きな刺激を与えています。
さらに、スターバックスコーヒージャパンは2017年に、性別適合手術を受けるための専用休暇制度や、同性婚でも異性婚と同等の権利を認める福利厚生制度を導入しました。性別適合手術とは、自身の自認する性別に身体の構造を近づけるための医療的な処置のことですが、こうしたステップに会社が寄り添う姿勢は非常に先進的です。企業の競争力は、どれだけ多様な価値観を認め、一人ひとりが能力を発揮できる土壌を作れるかにかかっていると私は確信しています。
職場環境の評価指標「PRIDE指標」とこれからの展望
こうした取り組みを後押ししているのが、2016年にソニーやパナソニックなどの主要企業が中心となって策定した評価指標です。これは「PRIDE指標」と呼ばれ、トイレや制服の配慮、福利厚生の充実度などを客観的に採点する仕組みになっています。2019年には約190社がこの審査に挑み、なんと約150社が最高ランクの「ゴールド」を獲得しました。これほど多くの企業が本腰を入れている事実は、日本のビジネス界における意識改革が本物であることを証明しています。
私は編集者として、今回の判決や企業の動きを心から歓迎します。LGBTへの配慮は、決して一部の人だけのための「特権」ではなく、あらゆるマイノリティが働きやすい寛容な社会を作るための第一歩に他なりません。多様性を認めることは、組織の柔軟性を高め、結果として日本経済の再生にも寄与するはずです。誰もがトイレや服装に悩まされることなく、自身のスキルアップに専念できる。そんな「当たり前」の景色が、2019年の今、まさに広がりを見せようとしています。
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