日本の文具界を代表する老舗、ぺんてるを舞台にした壮絶な株式争奪戦が、かつてない局面を迎えています。2019年12月13日、ぺんてるの経営陣と手を組んだ同業大手のプラスは、株式の買い付け結果が目標の下限である20%を突破し、約30%に達したことを明らかにしました。これにより、一時はコクヨによる買収が確実視されていた情勢が、一気に混沌とした霧の中に包まれています。
ぺんてる側は今回の結果を受け、これまで水面下で進めてきたコクヨとの協力関係に向けた協議を、完全に打ち切るという強気の姿勢を打ち出しました。両社の連名で出された資料には、コクヨが目論んでいた子会社化を阻止したという勝利宣言にも近い言葉が踊っています。プラスの取得分と、現状の経営陣を支持する既存株主の持ち分を合算すれば、その比率は過半数の50%を優に超えるとの見解を示しました。
対するコクヨは、筆頭株主として議決権比率45.66%を確保しているものの、悲願である過半数の取得には届いていません。SNS上では「馴染みのある文具メーカー同士が争うのは悲しい」「ぺんてるの独自性が守られるのか心配だ」といった、愛用者たちからの戸惑いや不安の声が次々と上がっています。文具ファンにとっては、製品の品質向上よりも企業間の陣取り合戦が優先される現状に、複雑な思いがあるようです。
拒否権の応酬が招く「勝者なき緊張状態」の懸念
今回の事態で最も懸念されるのは、企業の意思決定がストップしてしまうリスクでしょう。プラス側は、株主総会で合併などの極めて重要な決断を単独で否決できる「拒否権」のライン、つまり33.4%以上の確保を狙っています。一方で、すでに4割超を握るコクヨもまた拒否権を有しており、双方が相手の提案をブロックし合えるという、まさに「出口のない緊張状態」に陥る可能性が極めて高いのです。
ここで注目すべきは「議決権」という専門用語です。これは株主総会で企業の運営に関する賛否を投じる権利を指しますが、今回のように勢力が真っ二つに割れると、新しい鉛筆一本の戦略すら決まらなくなる恐れがあります。文具市場は2018年度に前年度比で約1%減少の4603億円規模となっており、少子化やデジタル化の荒波に晒されています。足の引っ張り合いをしている余裕など、本来はどこにもないはずです。
個人的な見解を述べさせていただければ、伝統ある企業が存続のためにパートナーを選ぶ権利は尊重されるべきですが、それが「泥仕合」となってブランド価値を損ねては本末転倒です。コクヨ幹部が「5割超えの根拠が不明」と反論するように、数字の解釈を巡る争いは今後さらに長期化するでしょう。2019年12月15日にはコクヨの買い付け期限が迫りますが、16日以降の動向から目が離せそうにありません。
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