日本のビジネス界に激震が走っています。2019年12月14日現在、東芝の子会社である「ニューフレアテクノロジー」の買収を巡り、親会社の東芝と光学機器大手のHOYAが正面からぶつかり合うという、極めて異例の事態に発展しました。
今回の騒動の主役である「TOB(株式公開買い付け)」とは、特定の企業の株式を「あらかじめ決めた価格・期間・枚数」で、市場外で一気に買い集める手法を指します。通常は事前の根回しが行われますが、今回はその常識を覆す展開となっています。
SNS上では「日本企業同士がここまで露骨に競い合うのは珍しい」「HOYAの攻めの姿勢がかっこいい」といった驚きの声が上がっています。かつての護送船団方式と呼ばれた、横並びの経営から脱却しようとする企業の意志が感じられるでしょう。
タブー視された「敵対的買収」が戦略の主軸へ
過去を振り返れば、2006年にオリジン東秀を巡ってイオンとドン・キホーテが争った例などはありましたが、国内大手同士が公開市場で火花を散らすのは非常に稀です。これまでは、水面下の交渉で決着をつけるのが「美徳」とされてきました。
しかし、2019年に入りその潮目は明らかに変わっています。伊藤忠商事によるデサントへの買い付けや、HISによるユニゾホールディングスへの攻勢など、相手の同意を得ない、いわゆる「敵対的買収」が有力な成長戦略として浮上しています。
デジタル化が加速し、グローバル競争が激化する現代において、自社リソースのみに頼る「自前主義」では生き残れません。変化に適応するための手段として、M&A(合併・買収)を通常業務として活用する企業が増えているのです。
投資家と取締役会の変化が「真剣勝負」を生む
この背景には、コーポレートガバナンス(企業統治)の劇的な変化が存在します。これは、会社が株主などの利益のために正しく運営されているかを監視する仕組みのことです。近年の改革により、経営の透明性が強く求められるようになりました。
特に投資家には、預かった資金を最大限に運用する「受託者責任」があります。そのため、たとえ経営陣が反対しても、株主にとってより高い利益をもたらす提案であれば、そちらを優先すべきだという圧力が強まっているのです。
私は、このHOYAの決断は非常に合理的であり、日本経済の健全な新陳代謝を象徴する出来事だと考えています。慣習に縛られず、正当な価格を提示して競争することは、最終的に企業の価値を正しく評価することにつながるはずです。
ガバナンス重視の波に乗り、HOYAは「勝算あり」と踏んでこの勝負に打って出ました。事前調整済みの計画であっても株主が納得しなければ覆る今の時代、日本企業の経営スタイルは、今まさに大きな転換点を迎えていると言えるでしょう。
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