ソフトバンクの巨額節税にメス!2020年度税制改正大綱が暴くM&Aスキームの裏側と新ルール

2019年12月13日、政府・与党が決定した「令和2年度税制改正大綱」において、大きな注目を集めているトピックがあります。それは、巨大企業による「意図的な赤字創出」を防ぐための新たな規制です。この改正の背景には、ソフトバンクグループ(SBG)が2018年に行った、驚くべき規模の節税対策が深く関わっています。

事の発端は、SBGによる英半導体設計大手アーム・ホールディングスの買収劇にまで遡ります。同社は、グループ内の組織再編を巧みに利用することで、合法的に多額の損失を発生させ、法人税の負担を実質的にゼロにするという手法を取りました。SNS上では「合法的とはいえ、これほどの大企業が税金を払わないのは不公平だ」といった批判の声が相次いでいます。

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巧みな「配当」と「売却」で赤字を生み出す魔法のスキーム

SBGが用いた手法を具体的に解説しましょう。まず2018年3月、SBGは子会社のアーム・ホールディングスから、その中核事業であるアーム・リミテッドの株式の大部分を「配当」として吸い上げました。これにより、中核資産を失ったアーム・ホールディングスの企業価値は、一気に目減りすることになります。

その後、価値が激減した状態のアーム・ホールディングス株を、自社傘下のビジョン・ファンドなどへ売却しました。ここで重要になるのが「株式簿価(ぼか)」という概念です。これは帳簿上の取得価格のことで、高値で買った時の簿価と、価値を下げてから売った時の安値の差額が、税務上の「巨額の赤字」として計上されたのです。

この赤字を他の利益と相殺(損益通算)することで、納税額を圧縮したわけです。ビジネスの実態としてはアーム社は依然としてグループ内に留まっており、何も変わっていません。形式上の取引だけで巨額の節税を成立させるこの手法は、まさに制度の「抜け穴」を突いたプロの業と言えるでしょう。

国税庁も動いた!2020年度から導入される「封じ込め」の新ルール

当初、国税庁はこの節税策を問題視し、包括的な規制での対応を検討しました。しかし、SBGの取引自体に違法性はなく、強引な法解釈での課税は見送られました。そこで政府は2019年夏頃から財務省と調整を重ね、ルールそのものを変更して事後的に穴を塞ぐという決断を下したのです。

新ルールでは、子会社から簿価の1割を超えるような多額の配当を受けた場合、親会社が持つその子会社株の簿価を強制的に引き下げることを義務付けます。これにより、配当で価値を抜いた後に株を売っても、売却損が発生しなくなります。まさに「打つ手なし」の状態にする強力な対策です。

ただし、通常の経営判断で配当を行う優良企業まで規制に巻き込むわけにはいきません。そこで、過去10年以内に買収された子会社に限定するなど、対象を絞り込む工夫もなされています。私個人としては、今回の改正は公平性の観点から妥当だと考えますが、企業の柔軟な再編を阻害しないバランス感覚も重要になるでしょう。

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