【島本理生】愛猫「たび」が運ぶ冬の訪れと不思議な絆。石油ストーブに負ける飼い主の切ない幸せ

吐く息が白くなり始める季節、猫がそっと体温を分け合おうと寄り添ってくる瞬間に、私たちは冬の本番を感じるものです。直木賞作家の島本理生さんのご家庭でも、愛猫である「たび」ちゃんが冬の到来を告げる重要な役割を果たしています。この「冬と猫」の心温まるエピソードに対し、SNSでは「猫を湯たんぽ代わりにする幸せは冬だけの特権」「島本さんの描く猫との距離感がたまらない」といった共感の声が数多く寄せられています。

普段から人懐っこい性格だというオスのたびちゃんですが、夏場はどこかクールな対応を見せているそうです。ところが、2019年11月の末頃から様子が一変しました。島本さんがソファーに座った瞬間に猛ダッシュで駆け寄ったり、誰彼構わず抱きついたりと、冬限定の「超甘えん坊モード」に突入したのです。特に朝、小さなお子さんの膝に無理やり乗っかろうとして、体格が合わずに「子猿」のようになっている姿は、なんとも微笑ましい光景と言えるでしょう。

たびちゃんと島本さんが出会ってから、2019年12月06日の現在に至るまで、実に13年という月日が流れました。里親のもとから引き取った当時の写真を見返すと、島本さん自身がミニスカートを履いていたりと、自身のファッションの変化からも時の流れを感じるそうです。かつて独身で一人暮らしをしていた頃、仕事や休息の傍らで鳴き声を上げていたたびちゃんは、彼女にとって最も身近でかけがえのないパートナーでした。

そんな一人と一匹の歴史の中には、科学では説明のつかない奇妙な出来事もありました。ある夏の地方取材帰り、島本さんが畳で昼寝をしていた時のことです。意識ははっきりしているのに体が動かない、いわゆる「金縛り」の状態に陥りました。金縛りとは、睡眠中に筋肉の麻痺が解けず、意識だけが覚醒してしまう現象ですが、彼女の耳には正体不明の子供の笑い声まで聞こえてきたというから驚きです。

その恐怖が頂点に達した瞬間、静寂を破ったのがたびちゃんの鋭い鳴き声でした。その声に弾かれるように体が自由になった彼女が振り返ると、そこには障子の向こうからじっと見守る愛猫の姿があったのです。周囲からは「飼い主を救った賢い猫」と絶賛されたそうですが、愛する存在が危機を救ってくれるというエピソードは、ペットを飼う人にとって究極の理想形ではないでしょうか。

13歳という年齢を迎え、少しずつ痩せたり歯が弱くなったりと老いを感じさせる場面も増えてきましたが、たびちゃんの人間に対する深い信頼は揺るぎません。島本さんのお子さんの友人が遊びに来た際も、嫌がることなく触れ合いを楽しむ姿に、島本さんは「こんなにも人間を信じてくれている」と深い感動を覚えています。長年連れ添ったからこそ通じ合う、種族を超えた無償の愛には、読んでいるこちらまで胸が熱くなります。

しかし、そんな感動的な親子のような蜜月関係にも、冬の強敵が現れることで終わりを告げます。その正体は、なんと石油ストーブです。一度ストーブが点火されれば、たびちゃんは飼い主の膝よりも暖かな熱源を優先し、その前でゴロゴロと至福の時を過ごします。あまりに熱心に暖まりすぎて、毛が熱くなっているのを心配して抱き上げる島本さんの姿もまた、愛に満ちた冬の日常として私たちの心に残り続けるでしょう。

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