私たちの生活に欠かせない銀行振込の仕組みが、今まさに大きな転換点を迎えようとしています。公正取引委員会は2019年12月07日までに、銀行間の送金実態に関する本格的な調査に乗り出しました。現在、国内のほぼ全ての金融機関を結んでいる「全銀システム」は、銀行以外の事業者が参入するにはハードルが高く、手数料も高止まりしているという指摘があるためです。
SNS上では「他行宛ての振込手数料が高すぎる」という不満や、「もっと手軽にスマホ決済を使いたい」といった声が多く聞かれます。金融とITを融合させた「フィンテック」という言葉が浸透する中で、既存の巨大なシステムが新しいサービスの芽を摘んでいないか、厳しい目が向けられています。フィンテックとは、送金や家計管理などをテクノロジーで便利にする革新的な動きを指します。
全銀システムという巨大な壁と新規参入の難しさ
なぜ、新しい決済企業が自由に送金サービスを展開できないのでしょうか。その理由は、銀行口座間のやり取りを支える「全銀システム(全国銀行データ通信システム)」の構造にあります。このシステムに参加するには、運営主体の承認や莫大な加入費用が必要です。資金力に乏しい新興のフィンテック企業にとっては、この接続権限を得ること自体が非常に高い障壁となっているのが現実です。
現在の仕組みでは、フィンテック企業は銀行の口座から資金を出し入れするたびに、銀行側に手数料を支払う必要があります。このコストが重くのしかかれば、結果として利用者が支払うサービス料金も安くなりません。私は、こうした「見えない壁」を壊すことこそが、真の意味で消費者に利益をもたらすキャッシュレス社会の実現に繋がると確信しています。
一方で、銀行側には「システムの安定」という譲れない正義があります。全銀システムは1日あたり平均で約12兆円という驚異的な金額を処理しており、万が一のシステム障害やセキュリティー事故は日本経済を混乱させかねません。利便性を優先してセキュリティーの甘い企業を安易に受け入れられないという主張も、金融インフラを守る立場としては極めて妥当な論理です。
2020年春に向けた調査報告が示す日本の進む道
公正取引委員会は、大手銀行やフィンテック企業への書面調査などを通じて問題点を洗い出し、2020年3月末までには調査報告をまとめる予定です。政府内でも、一定のセキュリティー基準を満たした企業に接続権限を与えたり、手数料の引き下げを促したりする議論が活発化しています。独占禁止法の観点から、業界横並びの手数料設定にメスが入る可能性も否定できません。
2019年10月に開始されたポイント還元制度により、私たちの「脱現金」への意識は急速に高まりました。しかし、土台となる送金インフラが古いルールのままでは、真のイノベーションは起きないでしょう。信頼性を維持しつつ、いかに門戸を開放するか。この調査の結果が、日本のデジタル決済の運命を左右すると言っても過言ではありません。
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