日本とフランスが二人三脚で進めてきた次世代原子炉の共同建設計画が、大きな転換点を迎えました。経済産業省は2020年度の予算概算要求において、関連費用の計上を見送る方針を固めています。これまで日本側は200億円を超える巨額の研究開発費を投じてきましたが、フランス側から計画の中止が通知されたことで、事実上の白紙撤回となりました。
この決定に対し、SNSなどのネット上では「膨大な税金が消えてしまった」「今後のエネルギー政策はどうなるのか」といった不安や落胆の声が相次いでいます。日本のエネルギー戦略の柱として期待されていたプロジェクトだけに、国民の関心も非常に高く、政府の次なる一手が注視されている状況といえるでしょう。
夢の原子炉「アストリッド」とは何か
今回、開発が止まったのはフランスの高速実証炉「アストリッド」です。そもそも「高速炉」とは、発電しながら消費した以上の燃料を生み出したり、核燃料を効率よく再利用したりできる革新的な原子炉を指します。通常の原発よりも資源を無駄なく使えるため、資源の少ない日本にとっては、まさに「夢の技術」として長年研究が続けられてきました。
日本は1970年代から「もんじゅ」という独自の高速増殖炉を開発してきましたが、相次ぐトラブルにより2016年に廃炉が決定しています。その「もんじゅ」に代わる希望の星として、2014年5月22日に安倍晋三首相が訪仏した際、技術大国フランスとの協力に合意したのがこのアストリッド計画だったのです。
しかし、フランス側は2018年11月に開催された日仏政府高官の会合にて、計画の中止を日本に伝えていました。その理由は「現在はウラン資源が市場に溢れており、急いで高速炉を建てる必要性がなくなった」という現実的なものです。実機を建設する代わりに、今後はコンピューター上のシミュレーションに注力する姿勢を見せています。
プルトニウムの出口を失う日本への警鐘
計画の頓挫は、単なる技術開発の失敗に留まりません。日本が進める「核燃料サイクル政策」に深刻な影を落としています。これは、使い終わった核燃料を再処理して「プルトニウム」を取り出し、再び燃料として活用する仕組みです。高速炉はこのプルトニウムを大量に消費するはずの「出口」としての役割を担っていました。
もし高速炉が実用化されなければ、青森県の再処理施設で生み出される年間約8トンものプルトニウムが行き場を失ってしまいます。プルトニウムは核兵器の材料にも転用可能な物質であるため、国際社会からは厳しい目が向けられています。実際に2018年には、米国から保有量の削減を強く求められた経緯もありました。
私は、今回の計画白紙を機に、日本はより現実的で透明性の高いエネルギー戦略を再構築すべきだと考えます。世界を見渡せば、ロシアが2015年から実証炉の運転を開始するなど技術覇権を握りつつあります。日本が国際的な信頼を維持しつつ、エネルギー自給率を高めるためには、過去の失敗を教訓にした新たなビジョンが不可欠でしょう。
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