電子機器の受託製造サービス、略してEMS(エレクトロニクス・マニュファクチャリング・サービス)業界において、独自の進化を遂げ、今、大きな注目を集めている企業があります。それが、ユー・エム・シー・エレクトロニクス(UMCエレ)です。同社は、2019年6月14日時点で、国内外の300社を超えるメーカーから多岐にわたる電子機器の製造を一手に引き受けており、その実績と信頼性は確固たるものとなっています。特に業界内で際立っているのが、自動車の重要保安部品の製造を担っている点でしょう。これは、自動車の**「走る・曲がる・止まる」といった安全の根幹を支える極めて重要なパーツを指し、EMS企業がこれを手がけるのは異例中の異例であり、UMCエレが他社と一線を画す最大の要因となっています。
同社の驚異的な成長を支えているのが、LCA(低コスト自動化設備)と呼ばれる、社内で独自に開発・生産している生産設備群です。UMCエレの工場を訪れると、ネジ締めやコーティングの塗布、さらに高度な画像検査といった、製造における多様な工程を次々とこなす自前の製造機械やロボットがずらりと並んでいる様子を目にすることができます。このLCAこそが、同社をEMS業界で国内第2位という大手企業に押し上げた、まさに成長の源泉と言えるでしょう。中国に設けられたLCAセンターでは、金属加工から溶接まで自前でこなしながら設備を製造しており、その光景はまるで専門の機械メーカーのように映ります。私はこの徹底した内製化の姿勢に、同社の「絶対に勝つ」という強い執念を感じずにはいられません。
なぜUMCエレは、外部から高価な設備を購入するのではなく、手間をかけてまで自社で設備を製造する内製化を進めているのでしょうか。その理由は、一言で言えばコスト競争力の極限までの追求**にあります。自前で設備を開発することで、顧客から受注した製品の特性や、生産現場の具体的なニーズにぴたりと合わせた設計が可能になります。これにより、外部調達よりもコストを大幅に抑えられるだけでなく、万が一、設備に不具合が生じた際も、社内の技術者が即座に対応できるという大きなメリットが生まれます。さらに、LCAとシステムを組み合わせることで、トレーサビリティー(生産履歴の追跡)を徹底的に確保できる点も、自動車関連メーカーが高い信頼を寄せ、重要保安部品の受注に至った重要な評価ポイントとなっているのです。
人件費高騰を乗り越えた「現地で生き抜くためのLCA」開発秘話
LCA開発のきっかけは、2000年の中国進出に遡ります。当時の中国では、急速な経済成長に伴い人件費の上昇が続いており、現地の激しい受注競争の中で勝ち抜くためには、従来の生産体制では限界が見えていました。人手をいたずらに増やすことなく、生産高を向上させるためには、自前の自動化設備を活用する必要に迫られたのです。内山茂樹社長は「LCAは現地で生き抜くためのアイデアだった」と当時を振り返っておられます。しかし、開発当初のLCAは、動きがぎこちなく、生産現場からは「この機械は使いにくい」といった不満の声も上がったそうです。これに対し内山社長は、「機械をうまく使いこなすのも技術の一つ。失敗を責めない。何でもやってみればいい」と繰り返し、社員の挑戦を後押ししました。この失敗を恐れない企業文化が、技術の飛躍的な向上を促したのでしょう。
その結果、LCAの性能は次第に向上し、小型化も進みました。今では、現地の中国人社員が設計を手がけた多様な用途のLCAが、年間で実に900台も生産されており、日本、中国、メキシコといった同社の世界中の生産拠点で活用されています。この**「現場の声を活かした改善と内製化」のサイクルこそが、UMCエレの競争力を絶えず高めているのだと、私は確信しています。
昨今、電気自動車(EV)の普及に代表される自動車の電動化**が追い風となり、電子部品の需要はますます拡大しています。UMCエレは、この波を捉え、2019年3月期には売上高が前年比11%増の1395億6200万円を達成しており、車載機器を中心に着実に売り上げを伸ばしている状況です。今後、同社が次に目指すのは、スマートファクトリーの実現です。これは、単に生産工程を自動化するだけでなく、倉庫からの部品運搬作業などもロボット開発によって自動化しようという壮大な構想であり、さらなる生産性の向上と効率化が期待されています。
コメント