世界中どこにいても、スマートフォン一つで瞬時にお金が届く。そんな当たり前のような光景が、いよいよ銀行の国際送金でも実現しようとしています。2019年11月3日現在、約1万1千もの金融機関が参加する国際ネットワーク「SWIFT(スイフト)」は、2020年中に海外送金を30分以内に完了させる新システムを、加盟校の約9割が導入する見通しを発表しました。
これまで銀行を通じた海外送金といえば、到着までに2日から3日も待たされるのが一般的でした。さらに4,000円を超える高額な手数料が重荷となり、利用者にとって非常に不便な状況が続いていたのです。しかし、テクノロジーを駆使した「フィンテック」勢力の台頭が、この古くからの銀行業界を大きく揺さぶり始めています。
フィンテックとは、金融(Finance)と技術(Technology)を掛け合わせた造語で、ITを活用してこれまでにない便利な金融サービスを生み出す動きを指します。SNS上では「銀行の送金は遅すぎるし高すぎる」という厳しい声が目立っており、利便性の高い格安な送金アプリへとユーザーが流出している現状に、銀行側もついに本腰を入れ始めました。
新システム「gpi」がもたらす透明性と競争の波
銀行業界が起死回生の一手として打ち出したのが、2017年に開発された新規格「gpi(グローバル・ペイメント・イノベーション)」です。これは、すべての送金に「追跡指標(トラッカー)」という荷物の追跡番号のようなものを付与する仕組みです。これによって、これまでブラックボックスだった送金の進捗状況が、リアルタイムで把握できるようになりました。
国際送金には、バケツリレーのように複数の銀行を経由する「コルレス銀行(中継銀行)」という存在が不可欠です。gpiはこの中継地点での処理時間や手数料を白日の下にさらしました。仕事が遅く手数料が高い銀行は自然と選ばれなくなるため、銀行間に健全な競争原理が働き、結果として送金スピードが飛躍的に向上するのです。
実際に導入済みの銀行間では、すでに送金の約40%がわずか5分以内に完了し、半数が30分以内に着金するという驚くべき成果が出ています。日本国内でも2018年に3大メガバンクが導入を開始しており、2019年7月24日には京都銀行も採用するなど、地方銀行にもこの変革の波は確実に広がっています。
デジタル通貨に対抗する銀行の未来予想図
この動きをさらに加速させているのが、フェイスブックが計画しているデジタル通貨「リブラ」などの存在でしょう。もしこうした新たな通貨が世界中で使われるようになれば、既存の銀行の存在意義が問われかねません。銀行業界が「30分以内の送金」を掲げ、フィンテック勢に対抗するのは、もはや生存をかけた必然の選択といえます。
編集者としての視点では、この改革は単なるスピードアップに留まらないと感じています。送金のコストが下がれば、個人の海外送金はもちろん、中小企業の海外展開もより活発になるはずです。19年夏にシンガポールで行われた実験では、わずか25秒以内に決済が完了した例もあり、国際送金が「国内送金と変わらない感覚」になる日はすぐそこまで来ています。
今後は、欧州のドイツ銀行やルクセンブルク国際銀行なども続々とこのネットワークを強化していく方針です。2020年という年は、私たちがこれまで抱いていた「海外送金は面倒で時間がかかるもの」という常識が過去のものになる、記念すべき転換点となるに違いありません。
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