「足の裏のご飯つぶ」とかけまして「博士号」と解く。その心は「取っても食えません」……。そんな自虐的ななぞかけが、大学関係者の間で語り草になってから長い年月が経ちました。思わず膝を打ってしまうほど巧みな表現ですが、当事者にとっては笑い事では済まされない切実な現実がそこにはあります。
かつて、大学院で博士号を取得することは輝かしいキャリアの象徴でした。しかし、現在では「ポスドク」と呼ばれる、博士号取得後に任期制の不安定な職に就く若手研究者たちの苦境が、社会全体を揺るがす深刻な課題となっています。ネット上でも「優秀な頭脳が報われないのは国益の損失だ」といった悲痛な声が絶えません。
深刻化するポスドクの高齢化と研究現場のリアル
ここで言う「ポスドク」とは、ポストドクター(博士研究員)の略称で、博士号を持ちながらも、大学の専任教授や准教授といった正規のポストに就けていない若手研究者を指します。統計によれば、彼らの平均年齢は2009年度の33.8歳から、2015年度には36.3歳へと上昇しており、不安定な生活を強いられる期間が長期化しているのです。
多くの企業が博士号保持者の採用に慎重な姿勢を崩さない一方で、大学側のポストも飽和状態にあります。せっかくの高度な専門能力が、社会の中で正当に評価されず、活かしきれていない現状は非常にもどかしいものです。私は、これこそが日本の科学技術の停滞を招いている元凶ではないかと危惧しています。
政府が動き出した!年700万円・最長10年間の大型支援策
こうした状況を打開するため、政府は2019年12月05日に決定した経済対策において、極めて大胆な支援策を打ち出しました。なんと、若手研究者に対して平均で年700万円を、最長10年間にわたって助成するという画期的なプロジェクトです。500億円規模の基金を設立し、主に科学技術分野から700人を選抜する計画を立てています。
この施策の最大のポイントは、単なる一時的な給付ではなく、10年という「長期的な安心」を提供することにあります。研究者が生活の不安に怯えることなく、独創的な研究に没頭できる環境を整えることは、海外と比較して遅れを取っている日本の人材育成において、起死回生の一手となるに違いありません。
世界との「頭脳争奪戦」に勝ち抜くための教育行政
現代は、人工知能(AI)や次世代高速通信といった分野で、国境を越えた熾烈な「逸材の争奪戦」が繰り広げられている時代です。優秀な人材を海外に流出させないためには、博士号を「取っても食えない」ものから、キャリアを「輝かせる」ための強力なパスポートへと脱皮させることが急務と言えるでしょう。
次世代の技術覇権をかけた国際競争が激化する中で、国の先見性が今ほど問われている時はありません。私は、今回の支援が単なるバラマキに終わらず、博士号を持つ人々が企業や行政など幅広いフィールドで活躍できる社会構造の変革に繋がることを強く願っています。2019年12月07日、日本の知性の未来を左右する転換点が訪れています。
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