大学の講義といえば、教授の話を一方的に聞く姿を想像しがちですが、昭和女子大学グローバルビジネス学部では、そんな常識を覆す光景が広がっています。2019年12月18日、世田谷のキャンパスで実践されているのは、1年生が主体となって課題解決に挑む「基礎演習」という必修科目です。
この授業の最大の特徴は、3年生の先輩たちが「ティーチング・アシスタント(TA)」として加わり、後輩の議論をリードしている点にあります。TAとは、教員の教育補助を行う学生スタッフを指す専門用語ですが、ここでは単なる「助手」を超え、学びの伴走者として重要な役割を担っているのです。
正解のない問いに挑む!対話が生む「よりよい解」へのプロセス
授業では「サークル内の人間関係トラブルをどう解決するか」といった、身近で正解のないテーマが設定されます。5〜6人の小グループに分かれた1年生たちは、事前に教材を読み込み、登場人物の背景まで深く洞察した上で議論に臨むのです。
リーダー役を交代で務め、最後には模造紙に意見をまとめて発表します。前田純弘教授は、声の大きい学生だけが目立つのではなく、全員で「よりよい解」を導き出す手法を学ぶことが肝要だと説いています。SNS上でも「こうした実践的な対話力こそ社会で役立つ」と、教育の質を高く評価する声が目立ちます。
高校時代は先生への質問が恥ずかしかったと語る1年生の森本寧々さんは、2019年度の授業を通じ、距離の近い先輩であるTAの存在が理解を深める助けになったと実感しています。対等に近い立場の先輩から助言を得ることで、学びのハードルが劇的に下がっているのでしょう。
教えることで自らも成長する、先輩たちの「本音」と「挑戦」
2018年度に始まったこの制度ですが、2019年度には12名の精鋭TAが選出されました。彼女たちは事前研修を経て現場に立ちます。3年生の堀川紗瑛さんや阿部ひかるさんは、TAへの挑戦をきっかけに、漫然と卒業を目指すだけの生活から脱却し、学ぶ目的を再発見できたと意欲を見せています。
もちろん、順風満帆なことばかりではありません。後輩への接し方に悩み、議論が停滞して落ち込むTAもいたようです。しかし、そうした苦い経験を含めて「人前で話す力が鍛えられた」と確信を持って語る彼女たちの姿からは、次世代リーダーにふさわしい逞しさが感じられます。
2020年に創立100周年を迎える昭和女子大学は、さらに「シニアTA」という新制度を導入し、経験を後輩へ継承する仕組みを整えています。これは企業における「管理職」の視点を養う、極めて高度なキャリア教育と言えるでしょう。
編集者の私見ですが、年齢の近い先輩がロールモデルとして教室にいる環境は、学生の心理的安全性を高め、アウトプットの質を飛躍的に向上させると確信しています。2年生でのボストン留学を控えた彼女たちが、この「共創」の場で磨いた人間力は、国際社会へ羽ばたくための最強の武器になるはずです。
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