フランス・パリの象徴であるエッフェル塔のすぐそばで、今、四国の伝統文化が熱い視線を浴びています。2019年12月21日までパリ日本文化会館で開催されている「四国遍路展」では、白装束に身を包んだマネキンを前に、現地の女性たちが驚きと興味の混じった表情を浮かべていました。巡礼者が身にまとうこの白い服は、かつては死装束を意味し、命がけで修行に挑む覚悟の象徴でもありました。そんな精神性が、海を越えた人々の心を揺さぶっているようです。
展示会場には、各札所で授与される「御朱印」や、現地の風景を収めた動画が並び、四国の静謐な空気を伝えています。SNS上でも「日本にこれほど精神的な旅のルートがあるとは知らなかった」といった驚きの声が上がっており、単なる観光地巡りではない、自分を見つめ直す旅としての「お遍路」が認知され始めています。四国経済連合会などの協議会がこの地で展示を行う背景には、ユネスコ本部があるパリで、世界遺産登録への機運を高めたいという強い願いが込められているのです。
スペインの聖地とも重なる「歩き遍路」の魅力
2019年12月14日には、俳人の黛まどか氏が自らの体験を語りました。彼女は世界遺産として名高いスペインのサンティアゴ巡礼路、約800キロメートルを踏破した経験を持つ、まさに巡礼のスペシャリストです。サンティアゴ巡礼路は1993年の世界遺産登録後に訪問者が劇的に増加し、地域経済を大きく潤しました。四国遍路もまた、世界に誇るべき文化遺産としてのポテンシャルを秘めており、黛氏のような「先達」の言葉は、今後の指針として非常に重みがあります。
驚くべきことに、現在四国を訪れる外国人の中でも、徒歩や自転車で霊場を巡る「歩き遍路」に挑戦する層ではフランス人が最も多いといいます。これは、現代アートの聖地として知られる直島の影響も大きいでしょう。ロンドンのテートモダン美術館では、直島に作品がある草間彌生氏や安藤忠雄氏の書籍が飛ぶように売れています。40代から50代のフランス人にとって、初めての日本旅行で直島を選ぶことはもはや定番となりつつあり、そこから四国へと足を伸ばす流れが生まれています。
「点」から「面」へ!中四国広域周遊の課題と未来
欧米からの旅行者は、アジア圏の観光客と比較して滞在期間が長く、消費額も大きい傾向にあります。せとうちDMOの調査によれば、欧米向けの瀬戸内ツアー代金は平均60万円に達し、一般的な訪日客の3倍にも上ります。しかし、この経済効果が地域全体に波及しているとは言い切れません。直島や広島といった特定のスポットに人気が集中する一方で、周辺の宿泊施設や体験事業者がその恩恵を十分に享受できていないという、もどかしい現状も見え隠れします。
私は、この「瀬戸内・中四国」という広大なエリアを、一つのストーリーで繋ぐことが不可欠だと考えます。現在の状況は、個々の宝石は輝いているものの、ネックレスとして繋がっていない状態ではないでしょうか。フランスの旅行関係者が指摘するように、知名度の高い拠点をフックに、周辺地域への周遊を促す仕組み作りを急がねばなりません。地域の事業者が手を取り合い、データの見える化を進めることで、世界中の旅人を魅了し続ける持続可能な観光圏が構築されることを切に願っています。
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