2019年12月21日、読書界に激震が走るような一冊が注目を集めています。それがジャレット・コベック氏による小説『くたばれインターネット』です。本作はいわゆる「ネット小説」の枠組みを根底から覆す、まさに「インターネットという怪物」そのものを解剖するような異色作といえるでしょう。SNS上では「読むだけでSAN値が削られる」「劇薬のような中毒性がある」といった悲鳴に近い称賛の声が相次いでおり、現代社会の歪みを象徴する一冊として話題をさらっています。
物語の舞台は2013年のアメリカ、サンフランシスコです。主人公は40代の白人女性アデレーン。彼女はかつて手がけたコミックの成功によって、経済的には恵まれた生活を送っていました。少し風変わりで、気取った話し方をする彼女は、もしインターネットが存在しない時代であれば、少しばかり「個性的な有名人」として穏やかに、そして優雅に人生を謳歌できていたに違いありません。しかし、21世紀のデジタル空間は彼女を放ってはおかなかったのです。
彼女の些細な言動は瞬く間にデジタル信号へと変換され、見知らぬ無数の人々の手によって拡散されていきます。アデレーンは、この時代において最も許されないとされる「大罪」を犯してしまうのですが、その顛末を描く筆致はどこまでも残酷で、そして滑稽です。ここでいう「拡散」とは、特定の投稿が爆発的に広まる現象を指し、一度火がつくと個人の力では制御不能となる現代特有の恐怖を、著者は容赦なく突きつけてきます。
カオスな構造が暴き出すデジタル時代の真実
著者のコベック氏自身が「マジでしょうもない本」と自虐的に語る通り、本作の構成は極めて特異です。読者は、まるで脈絡のないリンクを次々とクリックするネットサーフィンのような体験を強いられることになります。物語の筋道は頻繁に迷子になり、読者を意味不明な場所へと連れ去ります。この「ネットサーフィン」的な手法こそが、現代人の情報の受け取り方を鮮やかに模倣しており、断片的な情報が洪水の如く押し寄せる感覚を見事に表現しているのです。
作中には人種差別や性差別といった、目を背けたくなるような負の側面がこれでもかと詰め込まれています。膨大なデータと虚実が入り混じるその文体は、まさにSNSのタイムラインそのものといえるでしょう。編集者としての私見を述べさせていただければ、これほどまでに不愉快でありながら、同時にページをめくる手が止まらない作品は稀有です。私たちが日々向き合っているスマートフォンの画面が、いかに暴力的な構造を持っているかを、本書は突きつけてくるからです。
浅倉卓弥氏の見事な翻訳によって日本に届けられたこの一冊は、単なる小説の枠を超え、現代社会の構造を解き明かすための「処方箋」ならぬ「毒薬」として機能しています。2019年12月21日現在、私たちはこのデジタル空間から逃れることはできません。しかし、この「マジでしょうもない」物語に浸ることで、自分たちが置かれた異常な状況を俯瞰できるはずです。攻撃的で過剰なまでに饒舌なこの語り口に、あなたもきっと痺れるような快感を覚えるに違いありません。
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