2019年12月23日、極寒の冬を迎えた欧州のエネルギー市場が激震に見舞われています。ロシアとウクライナ、そして欧州連合(EU)の3者は、間もなく期限が切れる天然ガスの輸送契約を更新することで劇的な基本合意に達しました。これまで対立を深めていた両国が、土壇場で歩み寄りを見せた背景には、複雑に絡み合う各国の思惑と、人々の生活に直結する「エネルギー」という究極のカードが存在しています。
SNS上では「ついにガスが止まるのかとハラハラしたけれど、ひとまず安心」といった安堵の声が広がる一方で、依然として続く緊張状態に「政治の道具にエネルギーを使わないでほしい」という切実な意見も目立っています。この合意は、2020年1月1日以降も5年間にわたり、ウクライナのパイプラインを経由してロシア産のガスが欧州へ安定供給されることを約束するもので、私たちにひと時の休息を与えてくれました。
ロシアが支払う3300億円の代償とウクライナの譲歩
今回の契約で注目すべきは、ロシアの国営企業ガスプロムがウクライナに対し、約30億ドル(日本円で約3300億円)という巨額の賠償金を支払うことで決着した点です。これまで両国は、過去の契約内容の妥当性を巡って法廷闘争を繰り広げてきましたが、今回の新契約に伴いウクライナ側は訴訟を取り下げました。経済的に厳しい状況にあるウクライナにとって、この賠償金は非常に大きな意味を持つことになるでしょう。
しかし、この決定は単なる「仲直り」ではありません。ロシアは新たに建設中の海底パイプライン「ノルドストリーム2」などの稼働を見据えており、ウクライナを経由するガスの輸送量を、2020年の650億立方メートルから2021年以降は400億立方メートルへと段階的に削減する計画を立てています。つまり、ウクライナにとっては将来的な「通行料収入」の減少という新たな不安要素も抱える結果となりました。
米国の「待った」が招く欧米関係の亀裂
平穏が訪れるかと思われた矢先、2019年12月20日に米国のトランプ政権が放った「制裁」の一撃が状況を一変させました。米国は、バルト海の海底を通る「ノルドストリーム2」などの建設に関わる企業に制裁を科すと決定したのです。これに対しロシア外務省は「米国は自国の液化天然ガス(LNG)を欧州に売りつけるために強圧的な手段に出ている」と猛烈に反発しており、国際的な非難の応酬が始まっています。
ここでいう「エネルギー安全保障」とは、国が経済活動や国民生活に必要なエネルギーを安定的かつ手頃な価格で確保できる状態を指します。米国は、欧州がロシアへの依存を強めることは、安全保障上のリスクになると主張しているわけですね。しかし、ドイツをはじめとする欧州諸国からは「自分たちのエネルギー政策は自分たちで決める」という冷ややかな反応が返ってきており、大西洋を挟んだ同盟関係に深い溝ができつつあります。
個人的な見解を述べさせていただくと、国家間のパワーゲームのしわ寄せが、常に民間企業や一般市民のライフラインに向けられる現状には強い危惧を覚えます。エネルギーの多様化は重要ですが、それが一方的な経済制裁や強要によって行われるべきではないでしょう。2020年前半に完成を予定している新パイプラインが、融和の象徴となるのか、それとも新たな対立の火種となるのか。欧州の長く熱い冬は、まだ始まったばかりのようです。
コメント