「あれもこれも全部欲しい!」という素直な願いをインターネット上で公開し、周囲にプレゼントしてもらう「公開おねだり」という新しい消費スタイルが注目を集めています。その中心にあるのが、大手ECサイトのAmazonが提供する「ウィッシュリスト(ほしい物リスト)」という機能です。
もともとは自分専用の備忘録として使われてきたこのリストですが、最近では自分の欲しい商品をあえて外部に公開し、知人やフォロワーに購入を呼びかける使い方が広がっています。特に急成長を遂げるスタートアップ企業の間では、オフィス移転や設立記念などの節目に行う恒例行事として定着しつつあります。
働く女性を支援するメディアを運営する株式会社クラリティの古谷聡美代表は、2019年10月末にオフィスを構えた際、このリストを活用しました。ホワイトボードや冷蔵庫といった備品をリスト化したところ、友人や起業家仲間から驚くほどの勢いで贈り物が届いたそうです。
スタートアップを支える「おねだり」の連鎖
資金調達を行っている企業であっても、投資家から預かった貴重な資金は本業に直結する部分へ集中させたいものです。そこで、事務用品や栄養ドリンクといった細かな備品をウィッシュリストで募ることで、周囲からの精神的な応援を形として受け取っているのです。
タイミーやシェアダインといった話題の企業も、2019年の夏から秋にかけてのオフィス移転時に、高価なパソコンから収納ボックスまで幅広くおねだりを実施しました。多くの商品が実際に届いており、ネット業界では5年ほど前から続く「粋な文化」として受け入れられています。
この現象の背景には、誰もがAmazonのアカウントを持ち、ボタン一つで決済から配送まで完了できる利便性があるでしょう。SNS上でも「リストを公開しました!」という投稿に対して、「応援の気持ちを込めてポチりました」といった温かいやり取りが散見され、好意的な反響を呼んでいます。
個人でも活用!「お返し」の気遣い不要な新しい形
このトレンドは企業だけではありません。2019年11月に第2子を出産した神奈川県の女性は、育児に必要な粉ミルクや洗剤などをリストに登録しました。高級品でなくても、日常で使う少し質の良いものを選ぶことで、仕事関係の知人からお祝いとして贈ってもらえたといいます。
これまでの日本の贈答文化では、のし紙の準備や内祝いといった形式的なやり取りが負担になる側面もありました。しかし、ウィッシュリストであれば受取側は本当に必要なものを入手でき、贈る側も「相手がすでに持っているかも」というダブりの心配から解放されます。
「おねだり」と聞くと最初は厚かましい印象を受けるかもしれませんが、今の時代は「本当に喜ばれるものをスマートに贈りたい」というニーズが勝っているようです。Amazonが既存の商習慣に劇的な変化をもたらす「アマゾン・エフェクト」は、ついに個人のプレゼント文化にまで浸透してきました。
個人的な見解ですが、この仕組みは「お互いの時間を尊重する現代的な合理性」と「相手を応援したいという情緒」が絶妙に融合した素晴らしい発明だと感じます。形式に縛られず、純粋にお祝いの気持ちを交換できるこの文化は、今後ますます一般化していくに違いありません。
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