2万字に魂を宿す文字の芸術家!モリサワの書体デザイナーが明かす「究極のこだわり」と創作の裏側

私たちが日常的にスマートフォンや書籍で目にしている文字には、実は途方もない時間と情熱が注がれていることをご存じでしょうか。日本語は、ひらがなやカタカナ、そして膨大な数の漢字を組み合わせるため、1つの書体を完成させるのに最大で2万3千字もの作成が必要となります。この気の遠くなるような作業を担うのが、書体デザイナーと呼ばれる専門家たちです。

書体制作の最大手である株式会社モリサワで活躍する藤田佳史さんは、社内で「職人」と称されるほどのこだわりを持つデザイナーです。2019年12月23日現在、彼は文字に命を吹き込むため、数年という歳月をかけて1文字ずつ丁寧にスケッチを積み重ねています。SNS上でも「文字のバランスを整える作業がこれほど繊細だとは」と、そのプロ意識に驚きの声が上がっています。

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伝統と感性が交差する「剣閃」の誕生秘話

書体作りには、専門家が書いた原型の調整と、ゼロからのデザインという2つの手法が存在します。藤田さんが手掛けた「剣閃(けんせん)」という書体は、書道家が1年かけて認めた約1万字の筆致をもとに構築されました。彼の役割は、これら全ての文字に統一感を与えることです。たとえ単体で美しくても、文章として並んだ際に個性が強すぎれば、読みやすさを損なってしまうからです。

例えば「間」と「問」のように、同じ門構えを持つ文字でも、筆の勢いや重心をミリ単位で微調整しなければなりません。この工程だけで半年以上を要し、2019年10月の公開までに合計で約2年もの月日が費やされました。こうした「文字のトーン&マナー」を整える作業は、フォントの可読性(読みやすさ)とデザイン性を両立させるための、極めて高度な職人技と言えるでしょう。

デジタル時代にあえて「手書き」を貫く信念

藤田さんは現在、IT分野での使用を想定した「テック系」の新しい書体制作に挑んでいます。幾何学的な直線を多用したデザインを考案中ですが、驚くべきことに彼は、パソコン全盛の現代においても「手書きのスケッチ」を最も重視しています。PCのソフトによる計算式では表現しきれない、人間味のある「理想の線」を追求するため、シャープペンシルと消しゴムを手に試行錯誤を繰り返すのです。

大学時代にパイナップルの模写に没頭しすぎて果実を腐らせてしまったという逸話を持つほど、藤田さんの集中力は並外れています。私個人としては、こうした狂気にも似た探究心こそが、日本の文字文化を支えているのだと感じずにはいられません。効率化が叫ばれる世の中ですが、あえて手間をかけることでしか到達できない「美」が、私たちの視覚体験を豊かにしてくれているのです。

自分がデザインした文字が、街中の看板や商品のパッケージとして溶け込んでいる瞬間が、藤田さんにとって最大の喜びだといいます。次にあなたがふと目にした広告や本のタイトルに心惹かれたなら、それは彼のような職人が数年の歳月をかけて磨き上げた、文字の芸術品かもしれません。2019年12月23日の今日も、静かな工房で新しい文化の種が蒔かれ続けています。

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