命を守る山の予報士!ヤマテン・猪熊隆之氏が長野から挑む「気象遭難ゼロ」の志

日本が世界に誇る美しい日本アルプスですが、その険しさゆえに天候急変による遭難事故は後を絶ちません。こうした厳しい山の現実に立ち向かっているのが、長野県茅野市に拠点を置く「ヤマテン」です。代表を務める猪熊隆之氏は、日本で唯一といえる山岳専門の気象予報会社を設立し、登山者の安全を空から見守っています。

「山の天気は平地とは別物です」と語る猪熊氏の言葉には、並々ならぬ覚悟が宿っています。一般的に気象予報は平地を基準に行われますが、山岳地帯では地形の影響で気流が複雑に変化し、予測が極めて困難になるためです。だからこそ、特定の山の地形や特徴を熟知した専門の気象予報士が、一点一点丁寧に予測を立てる必要があるのでしょう。

スポンサーリンク

壮絶な大けがを乗り越えた「山への恩返し」

猪熊氏がここまで熱意を注ぐ背景には、大学時代の苦い経験があります。富士山での訓練中に大けがを負い、卒業後も慢性骨髄炎という重い病に悩まされました。しかし、山を愛する情熱は消えず、幼少期から好きだった気象の道で生きることを決意します。気象予報士の資格を取得した彼は、自らの登山経験を武器に、未開拓だった山岳予報の分野を切り拓きました。

2011年に設立されたヤマテンは、現在では全国59箇所の山々を対象に、月額300円(税別)という手軽な価格で詳細な予報を提供しています。1日の終わりには予報士たちが集まり、実際の天候とのズレを徹底的に検証する反省会が行われているそうです。こうした地道な努力が、約1万2000人という多くの会員からの信頼に繋がっているのでしょう。

SNS上では「ヤマテンの予報があったから撤退を決断できた」「登山には欠かせないお守り」といった声が上がっており、その信頼度は抜群です。筆者としても、数値データだけでなく、人間の経験知を融合させた予報こそが、極限状態の登山者にとって最も心強いガイドになると確信しています。

信州・茅野から世界へ届ける安心の風

猪熊氏は、太平洋側と日本海側の両方の天候を観察できる長野県の環境を「予報には絶好の場所」と評しています。2019年にはキリマンジャロ登頂を果たし、2020年春にはヒマラヤ遠征も計画するなど、彼自身の山への挑戦も止まることはありません。足の怪我も寛解し、まさに人生の再スタートを山と共に歩んでいます。

今後は、さらに予報対象の山を増やし、サイトの利便性を高めることで、一人でも多くの登山者を事故から救いたいと考えているそうです。自らの生きがいを社会貢献という形に変え、長野の地から安全な登山文化を育む猪熊氏の活動は、多くの山愛好家にとって希望の光となるに違いありません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました