2019年12月25日、日本の人口動態に衝撃が走りました。厚生労働省が発表したデータによれば、年間の出生数が86万4千人と過去最少を更新したのです。一方で死亡数が出生数を上回る「自然減」は51万2千人に達し、なんと鳥取県の全人口に匹敵する規模の日本人が、わずか1年で姿を消した計算になります。SNS上では「もはや国難」「将来が不安すぎる」といった悲痛な声が溢れ返り、トレンドを席巻し続けています。
なぜここまで急激に子供の数が減っているのでしょうか。最大の要因は、出産適齢期の女性人口の減少ですが、それ以上に深刻なのは20歳代の結婚・出産のハードルが高まっている点です。背景には、性別を問わず激しい成果主義にさらされる現代特有の労働環境があります。都内のIT企業に勤める27歳の女性は「責任ある仕事を任されるほど、出産後のキャリアに確証が持てない」と、焦燥感にも似た本音を漏らしています。
スウェーデンに学ぶ「働けるからこそ産める」社会
「共働きが増えると少子化が進む」という言説は、もはや古い常識かもしれません。世界に目を向ければ、スウェーデンやフランスのように女性の就業率が高く、同時に高い出生率を維持している国が存在します。これらの国々に共通しているのは、長時間労働が少なく、男女が等しく家庭に時間を割ける仕組みが整っていることです。仕事と育児を天秤にかける必要がない社会環境こそが、次世代を育むための土壌となっているのでしょう。
日本国内でも、先進的な企業はすでに動き出しています。IT大手のSCSKでは、残業時間の削減と有給休暇の完全取得を徹底した結果、第2子以降を出産する女性社員が急増しました。これは「働きやすさ」が「もう一人育てたい」という意欲に直結することを示す、極めて重要な事例と言えます。私は、こうした企業の自助努力こそが、停滞する政府の少子化対策に風穴を開ける鍵になると確信しています。
新卒一括採用という「線路」からの脱却
現在の日本において、20歳代の出生率が低い背景には「教育と雇用の固定化」という根深い問題があります。高校や大学を卒業して即座に就職し、一度でもそのレールを外れると再復帰が難しい「新卒偏重」の慣行が、若者のライフプランを縛り付けています。就職後にキャリアを固めてからと考えると、2018年時点で女性の初婚年齢は29歳まで上昇しており、生物学的な出産適齢期とのギャップが広がっているのが現状です。
これからの日本に必要なのは、一つの価値観に縛られない「複線型」の生き方を認める社会の包容力です。欧州のように、若いうちに出産や育児を経験し、その後で大学へ戻ったりキャリアを再構築したりできる柔軟性が欠かせません。政府は2019年10月から保育無償化を開始しましたが、生まれた後の支援だけでなく、若者が安心して「親になる選択」ができるような雇用改革こそが、今まさに求められているのではないでしょうか。
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