世界中で電気自動車(EV)の普及が加速する中、その心臓部である車載電池を巡る次なる戦いの火蓋が切って落とされました。2019年12月25日現在、日本の商社大手が熱い視線を送っているのは、実は「使い終わった後」の電池です。丸紅は中国の新興EVメーカー「BYTON(バイトン)」との資本提携を発表しました。この動きは、単なる車両への出資に留まらず、将来的に大量発生する中古電池を確保するための、極めて戦略的な布石といえるでしょう。
今回、丸紅が手を組んだBYTONは、元BMWの技術者が設立した注目のスタートアップです。彼らの開発するEVは、巨大なモニターや高度な通信機能を備え、「走るスマートフォン」と称されるほどの革新性を誇ります。SNS上では「デザインが未来過ぎる」「テスラを猛追する存在になるのでは」と期待の声が上がっています。同社には電池世界最大手の一角、CATLも出資しており、丸紅はこの強力なネットワークに食い込むことで、電池の安定調達を狙っています。
「寿命」は終わりではなく「第二の人生」の始まり
ここで、電池のリユース(再利用)について解説しましょう。一般的にEV用リチウムイオン電池は、8年から10年ほどで車載用としての役割を終えます。しかし、これは決して「ゴミ」になるわけではありません。車を走らせるパワーはなくなっても、蓄電能力は新品の6割から8割ほど維持されています。つまり、家庭用や産業用の「定置用蓄電池」としては、さらに5年から10年ほど十分に活躍できるポテンシャルを秘めているのです。
丸紅は、回収した電池を連結して巨大な蓄電池システムへと作り替える構想を描いています。現在、同社が推進している太陽光や風力といった再生可能エネルギーは、天候によって発電量が左右されるという課題があります。ここで中古電池を活用すれば、安価で大容量のエネルギー貯蔵が可能になり、クリーンエネルギーの安定供給に大きく貢献するはずです。資源を無駄にしないこの循環モデルは、持続可能な社会への大きな一歩だと私は確信しています。
伊藤忠も参戦!2020年から始まる巨大市場への挑戦
一方、ライバルの伊藤忠商事も負けてはいません。同社は中国EV首位のBYDに関連する企業と提携し、2020年にもリユース事業を開始する計画です。驚くべきはその規模で、大型コンテナに使用済み電池を敷き詰め、100世帯分の1日の電力を賄えるほどの巨大蓄電池を仕立て上げる予定です。2025年には、中国の使用済み電池市場は日本の42倍に相当する4200万キロワット時に達すると予測されており、まさに桁違いのビジネスチャンスが眠っています。
中国政府の補助金縮小など不透明な要素はありますが、数年内に「電池の大量廃棄時代」が到来するのは確実です。トヨタや日産といった先行企業が回収網を築く中、商社が中国の二大巨頭であるCATLやBYDの陣営に深く入り込む意義は極めて大きいでしょう。今のうちからサプライチェーン(供給網)の最上流を押さえることで、10年後のエネルギー市場の主導権を握る。そんな壮大なチェスゲームが、今まさに中国を舞台に繰り広げられているのです。
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