日本企業の収益性はなぜ「10代」がピークなのか?イノベーションを阻む「破壊のコスト」と再設計の必要性

2019年12月25日、日本の産業界に警鐘を鳴らす興味深いデータが示されました。早稲田大学の清水洋教授によると、日本企業の稼ぐ力、いわゆる「ROA(総資産利益率)」は、設立からわずか10代前半でピークを迎えてしまうというのです。一方で米国企業は50代までその勢いを保つ傾向があり、この「加齢による収益低下」の差は、単なる経営努力の差を超えた構造的な課題を浮き彫りにしています。

SNS上では「老舗企業ほど保守的になるのは実感としてある」「新陳代謝が起きない構造が日本を停滞させている」といった、現役世代からの切実な声が目立ちます。イノベーションとは本来、新しいものを生み出す「創造」と、古くなったものを整理する「破壊」がセットであるはずです。しかし、今の日本ではこの「破壊」のプロセスが極めて困難な状況に陥っているのではないでしょうか。

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「見えないコスト」が企業の足かせになる構造

なぜ日本企業は、収益性が下がった古いビジネスをいつまでも抱え続けてしまうのでしょう。そこには「流動性」というキーワードが隠されています。流動性とは、経営資源を状況に合わせて柔軟に動かせる性質のことです。研究結果によれば、40代の日本企業は、米国でいう80代の企業と同レベルまで組織が硬直化していることが明らかになりました。

この背景には、日本特有の「社会的な調整コスト」の負担構造があります。米国では不採算事業の切り離し(レイオフ)が比較的容易で、失業のリスクを社会全体で許容する側面があります。対して日本では、強い労働者保護の仕組みがあるため、企業が雇用維持という「社会保障」の役割を肩代わりしてきました。その結果、企業内に非効率な業務が滞留し、新しい挑戦への投資が後手に回るという悪循環が生まれています。

私は、この構造こそが「日本企業の優しさ」という美徳の裏側にある残酷な罠だと感じます。企業がセーフティーネットを担うことで、短期的には社会が安定するかもしれません。しかし、イノベーションの「抵抗勢力」を社内に温存し続けることは、結果として国全体の競争力を削ぎ、働く個人の将来的な選択肢を狭めることにも繋がりかねないからです。

イノベーションのコストを再設計する未来へ

持続的な成長を実現するためには、国と企業の役割分担を根本から作り直す時期に来ています。政府に求められるのは、衰退しつつあるビジネスの延命策ではなく、スムーズな退出と、より付加価値の高い企業の参入を促す環境整備です。また、個人のキャリアチェンジやスキルアップをサポートする公的な仕組みが整ってこそ、人々は古いタスクに執着せず、新しい時代へ飛び込む勇気を持てるはずです。

イノベーションを「出島」のような特殊な場所で育てるだけでは、もはや不十分でしょう。2019年12月25日の提言にある通り、企業が抱え込みすぎた「破壊のコスト」を社会全体で分かち合う設計図が必要です。それこそが、日本企業が「10代の輝き」を過ぎても、何度でも若返り、世界で戦い続けるための唯一の処方箋になるのではないでしょうか。

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