2019年12月20日、冬の寒さが身に染みる京都の街に、年の瀬を感じさせる威勢の良い音が響き渡りました。下京区に位置する西本願寺と東本願寺の両寺院にて、新春を迎えるための恒例行事である「すす払い」が執り行われたのです。この儀式は、単なる大掃除の枠を超えた、京都が誇る冬の風物詩として知られています。
西本願寺の象徴ともいえる御影堂(ごえいどう)には、かっぽう着に身を包んだ門徒や僧侶ら約600名が集結しました。御影堂とは、宗派の開祖である親鸞聖人の御真影を安置する極めて重要な建造物のことです。参加者たちは手に持った細い竹の棒で、一斉に畳を叩き始めました。そのリズムの良い衝撃音が、静謐な堂内に力強くこだまします。
畳を叩くことで空間に舞い上がった膨大な埃(ほこり)は、巨大な団扇(うちわ)を仰ぐことで、開け放たれた扉から豪快に外へと追い出されていきます。SNS上では、この雲海のように立ち込める埃と、それに立ち向かう人々の躍動感あふれる姿に対し、「これぞ日本の年末」「見ているだけで心が洗われる」といった感嘆の声が数多く寄せられました。
500年続く伝統と感謝の祈り
一方、ほど近くにある東本願寺でも、約200名の門徒たちが新年の準備に汗を流しました。この「すす払い」の起源は、浄土真宗の中興の祖として崇められる蓮如(れんにょ)上人の時代まで遡ります。驚くべきことに、500年以上もの長い歴史を絶やすことなく現代に受け継いでいる点は、まさに京都の文化的な深みを感じさせます。
私は、この行事が単なる清掃作業ではなく、一年を無事に過ごせたことへの「報恩感謝」の儀式であるという点に深い感銘を受けます。物理的な汚れを落とすと同時に、心の中に溜まった澱を払い除けるような、精神的な浄化のプロセスが含まれているのではないでしょうか。現代社会において、このように一丸となって祈りを捧げる場は非常に貴重です。
2019年12月20日の作業を終えた堂内は、それまでの喧騒が嘘のように清々しい空気に包まれました。門徒の方々の晴れやかな表情からは、新年を清らかな心で迎えられる喜びが伝わってくるようです。伝統を守り続けることの難しさと、それを支える人々の情熱が、この京都の冬をいっそう美しく輝かせているのは間違いありません。
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