2016年12月22日に発生し、多くの人々の心に深い傷を残した糸魚川大火。その猛火によって歴史ある蔵が全焼するという悲劇に見舞われたのが、老舗の「加賀の井酒造」です。あれから3年の月日が流れ、不屈の精神で歩みを進める同酒蔵を支えようと、新潟県長岡市の酒類卸「原商」が新たなプロジェクトを立ち上げました。
今回の試みは、インターネットを通じて不特定多数の人から資金を募る「クラウドファンディング」を活用した予約販売です。2019年12月22日から、国内最大手のプラットフォーム「マクアケ」にて受付が開始されます。地域の宝である酒蔵を守りたいという卸業者の熱い想いが、デジタルの力を借りて全国へと発信されることになりました。
注目の限定商品は、かつての意匠を現代に蘇らせた「復刻ラベル」の純米吟醸酒です。純米吟醸とは、お米を半分近くまで削り、低温でじっくりと発酵させた日本酒のことで、華やかな香りと繊細な味わいが特徴となります。一口5000円からの支援で、この特別な一本が2本手元に届く仕組みとなっており、販売数は1000本に限定されています。
SNS上では、このニュースに対して「あの火災を忘れていない」「少しでも力になりたい」といった温かい声が続々と寄せられています。特に、思い出深い旧ラベルの復活に胸を熱くするファンも多く、応援購入という形での支援の輪が広がることが期待されるでしょう。商品は2020年2月より、順次発送される予定となっています。
加賀の井酒造は、被災から約2年後の2018年には新工場を完成させ、再び酒造りの灯をともしました。これまでも商品を扱ってきた原商が、あえて今回クラウドファンディングという手法を選んだのは、単なる販売以上の意味があると感じます。それは、糸魚川の復興という物語を全国に共有し、永続的なファンを増やすための挑戦なのです。
筆者の私見ですが、伝統産業が災害を乗り越えるには、地域コミュニティの枠を超えた広域的な「共感」が不可欠です。酒類卸が主導してクラウドファンディングを行うという構図は、流通のプロが造り手のパートナーとして伴走する理想的な形と言えるでしょう。この一献が、多くの支援者の手に届き、復興のさらなる加速を願って止みません。
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