自動車部品メーカーの「丸順」が、次世代のモビリティ社会を見据えた大胆な舵取りを行っています。2019年12月25日現在、斉藤社長は2023年3月期を最終年度とする中期経営計画において、売上高600億円という野心的な目標に向けた確かな手応えを語りました。過去の経営危機という苦難を乗り越えた同社は今、特定の完成車メーカーに依存しすぎない「自立したサプライヤー」への変貌を遂げようとしています。
今回の経営戦略の目玉は、15億円という巨額の資金を投じたプレス工場の設備拡充です。ここで鍵を握るのが「超ハイテン材(超高張力鋼板)」と呼ばれる特殊な素材でしょう。これは鉄に微量の元素を加え、通常の鋼材よりも極めて高い強度を持たせた材料を指します。薄くても非常に丈夫なため、車体の軽量化と安全性の向上を同時に実現できる、次世代車両には欠かせない「戦略部品」の急先鋒といえる存在なのです。
図面通りの「部品」から独自の「商品」へ
斉藤社長は、単にメーカーから渡された図面通りに製造するだけの「部品」作りからの脱却を宣言しました。自社の独自技術を盛り込み、メーカー側へ積極的に提案を行うことで、付加価値の高い「商品」へと昇華させる姿勢を鮮明に打ち出しています。こうした攻めの姿勢に対して、SNS上では「技術力のある下請けが提案型企業に変わるのは頼もしい」「超ハイテンの加工技術は今後のEVシフトで大きな武器になるはず」といった期待の声が寄せられています。
また、世界的な電動化の波を捉え、電気自動車(EV)の心臓部を守る「バッテリーケース」事業にも注力する方針です。特に環境規制が厳しさを増す中国市場をターゲットに、アルミ材の加工や溶接設備の導入を加速させています。鉄よりも軽量なアルミの扱いに長けることは、航続距離の延長が至上命題であるEV開発において、競合他社に対する圧倒的なアドバンテージとなることは間違いありません。
取引先の多様化で見せる「自立」への覚悟
同社にとって、長年パートナーシップを築いてきたホンダは現在も最重要顧客であることに変わりはありません。しかし、日産自動車を主力とする東プレとの提携などを通じて、取引のポートフォリオは着実に広がりを見せています。かつて6割を占めていたホンダへの売上比率は、2023年3月期には5割を切る見通しです。これは決して関係の希薄化ではなく、自らの足で立つための「健全な分散」と言えるでしょう。
編集者の視点から見れば、丸順のこの変革は「守りから攻め」への完璧な転換だと感じます。多くの部品メーカーが電気自動車への移行を脅威と捉える中で、同社はそれを自らの技術を証明する絶好の機会と捉えています。15億円の投資は、単なる設備の更新ではなく、未来のモビリティ市場における主導権を勝ち取るための「勝負の一手」です。自立した技術集団として歩み始めた同社の動向から、今後も目が離せません。
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