少子高齢化や過疎化など、2020年の新潟県は数多くの厳しい課題に直面しています。そんな閉塞感を打破するために立ち上がったのが、古い慣習に縛られない「よそ者」や「若者」といった外部の視点を持つアウトサイダーたちです。彼らの斬新な挑戦が、今まさに地域の観光を大きく変えようとしています。ネット上でも「外の視点があるからこそ、地元の本当の価値に気づける」「新しい風が吹くことで地域が活気づく」といった期待の声が多数寄せられており、大きな注目を集めているのです。
日本海に浮かぶ美しい佐渡島では、1991年3月31日をピークに観光客が減少に転じていました。2018年には当時の半分以下となる約50万人にまで落ち込み、深刻な状況に陥っていたのです。この危機を救うべく同年に佐渡観光交流機構の専務理事に就任したのが、全国のスキー場を再生させてきた実績を持つ清永治慶氏です。鹿児島県出身で大手酒類メーカーなどを渡り歩いてきた清永氏は、これまでの佐渡の観光が時代に取り残されていると一喝します。
従来の団体旅行から個人旅行へ、そしてただ景色を眺めるだけの観光から「体験型」へと市場のニーズは変化しています。しかし、地元の意識は昔のままでした。「地域全体ではなく自分のお店だけが儲かればいい」という内向きな姿勢は、清永氏がかつて見てきた経営不振のスキー場とそっくりだったと言います。私は、こうした当事者意識の希薄さこそが地方衰退の根本原因であり、そこへ切り込めるのは利害関係のない外部人材だけであると強く確信します。
佐渡観光の平均単価は往復の船代も含めて5万6000円と高額なため、闇雲に広告を出しても集客には繋がりません。そこで清永氏は、会員制度を活用した「ファン作り」と、首都圏企業の研修旅行を狙ったMICEの誘致に乗り出しました。MICEとは、ビジネスの会議や研修など、多くの集客が見込めるイベントの総称です。島外のファンが割引を受けられる「さどまる倶楽部」の会員約1万8000人に着目し、紙のカードからスマートフォン向けのアプリへと刷新を進めています。
このアプリは電子通貨や特産品サイトとも連携し、外国語対応も進めることで訪日外国人の決済もスムーズにします。2020年4月には、初となる首都圏企業の社員研修が佐渡で実施される予定です。「外部による改革は急ぎすぎると反発を招く」と語る清永氏は、2年間の下地作りを経て、2025年までに観光客70万人を目指し力強く突き進んでいます。強烈なリーダーシップを持ってスピードと調和を両立させる姿には、地方創生の理想像が見て取れます。
日常に眠る宝の山を発掘する十日町の挑戦
豪雪地帯として知られる十日町市でも、2017年3月に設立された旅行会社「HOME away from HOME Niigata」の井比晃氏が新たな観光戦略に挑んでいます。柏崎市出身の井比氏は、前職の営業活動で十日町を訪れるうちに雪国文化に魅了され、友人たちと起業しました。地元の人々が「こんなものが観光商品になるの?」と驚くような日常の風景こそが、井比氏にとっては宝の山なのです。
地域のお母さんから教わる田舎料理、伝統的な草履作り、心温まる囲炉裏体験など、都会の人々や外国人にとって魅力的なツアーを企画しています。井比氏が大切にしているのは、観光客のために街を作り変えるのではなく、住民の日常を守りながら交流を生み出すことです。過度な観光地化によって住民の生活が脅かされる「観光公害」を防ぐためにも、この「持続可能な観光」の視点は今の日本に最も必要な考え方でしょう。
さらに十日町では、学校と連携して中高生の修学旅行や遠足を誘致するほか、美しい棚田を活用した欧米向けのコンテンツ開発も急ピッチで進んでいます。国勢調査によれば、十日町市では10年間で約7000人の人口が減少しました。井比氏はこの危機に立ち向かい、旅を通じて地域のファンを増やし、最終的には移住者を増やすことで「持続可能な自治体」を作るという壮大な目標を掲げて日々奔走しています。
若者とよそ者が復活させた伝統の「にいがた総おどり」
外部の視点が地域活性化を結実させた最高の成功例が、2002年に新潟市で始まった「にいがた総おどり」です。現在では国内外から1万5000人の踊り子と20万人の観客が集まる巨大イベントへと成長しました。この祭りを支える中核メンバーの能登剛史氏や岩上寛氏は秋田県や長野県の出身であり、イベント立ち上げ当時はまだ10代と20代の若者でした。まさに「若者とよそ者」の情熱が奇跡を起こしたのです。
岩上氏が着目したのは、新潟の伝統芸能でありながら消えかけていた、木樽を叩いて演奏する「樽砧」でした。外からの目線があったからこそ、その格好良さに気づき、江戸時代に実在したとされる幻の踊りを「下駄総踊り」として現代に見事復活させたのです。地元の人が当たり前すぎて見過ごしてしまう価値を、新鮮な感性でブランド化する手腕は見事としか言いようがありません。
新潟県の2018年の観光客数は7482万人と前年より増加しているものの、ここ10年の全体数は横ばいです。しかし、外国人観光客の宿泊者数は2011年と比べて4.4倍の約40万人泊に急増しており、温泉やスキーを中心に大きな伸びしろを残しています。古い常識を打ち破るアウトサイダーたちの独自の視点と情熱があれば、新潟の観光は2020年以降、さらにドラマチックな進化を遂げるに違いありません。
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