2019年は大型台風の上陸や豚熱(CSF)の発生など、埼玉県にとって危機管理の真価が問われる激動の1年となりました。こうした教訓を踏まえ、埼玉県の大野元裕知事は新春のインタビューにて、県の防災力を劇的に高める「災害に強い県」づくりへの強い決意を表明しています。SNS上でも「これからの時代、災害対策がしっかりしている地域に住みたい」「具体的な動きに期待している」といった、安全な暮らしを求める多くの声が寄せられており、県民の関心の高さがうかがえます。
知事が最も注力するのが、2019年8月の知事選で公約に掲げた「埼玉版FEMA(フィーマ)」の創設です。これはアメリカの連邦緊急事態管理局をモデルにした先進的な試みであり、2020年度中の体制構築を目指しています。従来の災害対策本部が被災後に立ち上がるのに対し、この仕組みは平時から機能する点が大きな特徴です。事前に被災シナリオを策定し、消防や民間企業といった外部機関と、有事の際に「いつ・どこが・何をすべきか」を明確に共有しておきます。
大野知事は「組織を作って満足するのではなく、机上演習を重ねてシナリオを常にアップデートしていく」と語り、実効性を重視する姿勢を示しました。救急救命だけでなく、物資の調達やサイバーセキュリティー対策まで、現代の災害に欠かせない「ロジスティクス(物資の調達・供給を最適化する管理システム)」の調整力を平時から磨き上げます。この強固な防災体制をアピールすることで、県民の安心安全を守るだけでなく、新たな移住者の獲得や企業の誘致にも繋げていく好循環を狙っているようです。
東京五輪を契機とした経済活性化と子育て世代への重点投資
一方、県内経済の展望について知事は、2019年後半の停滞感を認めつつも、2020年は東京オリンピック・パラリンピックによる消費拡大やグローバル化に大きな期待を寄せています。さらに、鶴ヶ島市で稼働するIHIの航空機エンジン新工場を起爆剤とし、地元の中小企業へビジネスチャンスを広げる支援に注力する方針です。知事自ら各地の商工団体と膝を突き合わせ、1時間半にも及ぶ対話を重ねており、現場の声は2021年度以降の予算へ着実に反映されるでしょう。
年が明け、いよいよ大野知事にとって就任後初となる2020年度予算案の編成が本格化します。無駄な歳出を削減する一方で、知事が注目するのは、消費意欲の高い子育て世代の収入を増やすような施策です。「1つの予算で何重もの効果を生み出す政策に重点を置きたい」と語るその眼差しからは、限られた財源を賢く使う知恵が見て取れます。県議会の最大会派である自民党との関係性についても、丁寧な対話を通じて手応えを感じている模様です。
かつてないスピードで災害対策の近代化を進める埼玉県の試みは、日本全国の地方自治体における「地方創生(地域社会の活性化を目指す取り組み)」の新たなモデルケースになるのではないでしょうか。危機管理の強化と経済への呼び水となる予算編成が、どのような形で結実するのか、これからの埼玉県の動きから目が離せません。大野知事が描く、安全で活力ある新しい埼玉の幕開けにふさわしい、実り多き2020年になることを強く期待したいところです。
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