近年、毎年のように日本列島を襲う猛烈な豪雨や台風に対し、私たちの暮らしの安全を根底から見直す時期が来ています。2019年12月05日、国土交通省は洪水の危険が極めて高い河川沿いの地域に住む方々を対象に、安全な場所への集団移転を強力に後押しする方針を固めました。これは単なる避難の推奨ではなく、居住地そのものを抜本的に変えることで、災害による被害を未然に防ごうという非常に踏み込んだ決断といえるでしょう。
これまでは、小規模な集落にとって移転の壁は決して低くありませんでした。しかし、今回注目すべきは「防災集団移転促進事業」という制度の適用要件が大幅に引き下げられた点です。この制度は、市町村が作成した計画に基づき、国が事業費の約94%という極めて高い割合を補助する仕組みを指します。いわば、国が住民の生活再建を金銭面で全面的にバックアップする、非常に手厚いセーフティネットといっても過言ではありません。
これまでのルールでは、移転先に整備する住宅団地の規模が「10戸以上」であることが必須条件とされていました。しかし、今回の緩和によって「5戸以上」を目安に支援が受けられるようになります。これにより、山間部などの狭い土地に数軒で暮らす方々も、この公的な支援を活用して安全な高台などへ引っ越すことが現実的になるでしょう。SNS上でも「これなら小さな地元でも動けるかも」「命を守るためには英断だ」といった前向きな反応が広がっています。
振り返れば、2018年07月の西日本豪雨や、2019年に発生した台風19号では、あらかじめハザードマップで氾濫リスクが指摘されていた場所で甚大な被害が出てしまいました。ハザードマップとは、予測される災害の範囲や被害の程度を地図化したもので、危険を可視化する重要なツールです。こうした教訓を踏まえ、危険と分かっている場所に住み続けるリスクを最小限に抑えることが、行政と住民の双方に求められる喫緊の課題となっています。
私は、今回の要件緩和は非常に理にかなった柔軟な対応だと考えます。慣れ親しんだ土地を離れることは心理的な抵抗が大きいものですが、気候変動の影響で雨の降り方が激甚化している今、精神論だけで命は守れません。住宅の用地取得から引っ越し費用まで補助が及ぶこの制度をきっかけに、一歩踏み出す勇気を持つことが大切です。少人数のコミュニティを維持したまま、安全な新天地で暮らすという選択肢が、より多くの人に届くことを願っています。
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