2019年7月2日、日本の飲料業界を揺るがす重大なニュースが飛び込んできました。ビールをはじめとする缶飲料に使用される缶容器の販売において、国内の缶製造大手3社が価格カルテルを結んでいた疑いで、公正取引委員会(公取委)が独占禁止法違反(不当な取引制限)を認定し、これら3社に対し、合計で約250億円という巨額の課徴金納付を命じる方針を固めたことが、関係者への取材で判明したのです。
今回、課徴金納付の対象となるのは、東洋製缶、北海製缶、そしてユニバーサル製缶という、いずれも東京に本社を置く業界の主要企業3社です。公取委はすでに企業側に処分案を通知しており、今後、企業側の意見を聞いた上で、最終的な決定を下す見通しです。この金額は、独占禁止法が禁じる行為によって得られた不当な利益を取り戻すためのものですから、その大きさが事態の深刻さを物語っていると言えるでしょう。さらに公取委は、再発防止を徹底させるため、これら3社に排除措置を命じる方針です。
ここで改めて知っておきたいのが、今回の違反の核となる価格カルテル、そして独占禁止法についてです。カルテルとは、複数の企業が互いに連絡を取り合い、競争を避ける目的で、商品の価格や生産数量などを共同で取り決める行為を指します。特に価格カルテルは、消費者がより安価な商品を選ぶ機会を奪い、市場の健全な競争を阻害する最も悪質な行為の一つと見なされます。独占禁止法は、まさにこのような私的な独占や不当な取引制限などを禁止し、市場における公正かつ自由な競争を促進するために制定されている法律です。
関係者によると、これら4社(課徴金納付対象の3社に加えて、後述する大和製缶)は、遅くとも数年前から、缶容器の販売価格を一定水準より下げないよう、互いの価格を同等に保つための価格カルテルを結んでいたとされています。これは、本来、価格競争によって消費者に還元されるべきメリットを、企業側の利益確保のために抑制していたことを意味します。私たちの日常に欠かせないビールや清涼飲料水の価格に、こうした構造が影響を与えていた可能性を考えると、一消費者として見過ごせない問題であると私は考えます。
一方で、今回の行政処分の対象からは外れたのが大和製缶(東京)です。同社の独占禁止法違反も認定されましたが、処分を免れることになった背景には、課徴金減免(リーニエンシー)制度の活用があるとみられています。この制度は、カルテルなどの違反行為を自ら公取委に申告した企業について、その申告の順番などに応じて課徴金が減額・免除される仕組みです。大和製缶は、違反行為を最初に自主申告した企業である可能性が高いと見られています。この制度は、違反行為の早期発見と解明に大きく寄与しますが、同時に、企業間の裏切りを生み出すことにもなり、カルテル参加企業にとっては大きなジレンマとなります。
実は、ユニバーサル製缶を除く3社は、2017年4月にも、食品用缶詰の缶で同様の談合を繰り返した疑いで、公取委の立ち入り検査を受けていました。今回の件は、過去の教訓が活かされなかったとすれば、企業倫理の面で非常に残念な事態と言えるでしょう。この報道がなされるやいなや、SNS上でも「私たちの身近な商品の値段に影響している」「これは悪質すぎる」「なぜ繰り返してしまうのか」といった、消費者の憤りや失望の声が数多く寄せられ、大きな反響を呼んでいます。
課徴金納付対象の一社である北海製缶の親会社、ホッカンホールディングスは、2019年7月2日、公取委から処分案の通知を受け取ったことを公表しました。「関係者に多大な心配、迷惑をかけ、深くおわびする。今後とも法令順守の徹底に取り組む」とのコメントを発表しており、事態の重大性を認識し、再発防止への決意を示しています。市場の公平性と消費者の利益を守るためにも、公取委による今回の毅然とした対応と、対象企業による真摯な反省と行動が強く求められています。
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