私たちの移動の概念を根底から変える、壮大なプロジェクトが日本全国で急速に動き出しています。ソフトバンクとトヨタ自動車という、国内屈指の巨大企業がタッグを組んで2018年に設立した「モネ・テクノロジーズ」が今、地方自治体との結びつきを急速に強めているのです。彼らが目指すのは、次世代の移動サービスである「MaaS(マース)」の構築であり、その歩みは誰もが予想しなかったほどの超ハイペースで進んでいます。
インターネット上でもこの動きは大きな注目を集めており、SNSでは「ついに田舎の交通弱者問題が解決するかもしれない」「トヨタとソフトバンクの本気が地方を救う」といった、未来への期待に満ちた声が数多く寄せられています。スマートフォンのアプリ一つで簡単に予約ができる「オンデマンド交通」の実証実験を中心に、モネのプラットフォームは今、日本各地のインフラを劇的にアップデートしようとしているのです。
そもそも「MaaS」とは?自動車メーカー8社が結集する異次元の基盤づくり
ここで少し、専門用語について分かりやすく解説しておきましょう。記事に登場する「MaaS(Mobility as a Service)」とは、一言で表現するなら「移動のサービス化」です。これまでバラバラだった電車、バス、タクシーなどのあらゆる交通手段を、スマートフォンのアプリなどを通じて一つのシームレスな移動サービスとして統合する、画期的な次世代の仕組みを指しています。
モネ・テクノロジーズの最大の強みは、このMaaSを支えるための巨大な共通基盤(プラットフォーム)を提供できる点にあります。この未来のインフラづくりには、トヨタだけでなく、ホンダや日野自動車、スズキといった国内の主要な自動車メーカー8社が相次いで参画を表明しました。各社が保有する膨大な走行データなどを持ち寄ることで、これまでにない高精度な運行システムの構築が可能となるのです。
単なる配車システムにとどまらず、将来的には飲食や医療、さらには自動運転技術までを一体化させた、移動そのものが価値を持つ新しい社会基盤の実現を目指しています。筆者の視点としても、この自動車メーカーの垣根を越えた大同団結こそが、日本のモビリティ産業が世界に誇る強力な武器になると確信しています。
2019年に32自治体へ急拡大!全国で動き出した驚きの実証実験
モネの進撃スピードは、当初の計画をはるかに凌駕しています。2019年の1年間だけで、協定を結んだり実証実験を開始したりした自治体は、なんと32に達しました。これは同社が当初想定していたペースの約1.6倍という驚異的な数字です。2019年3月6日に業務連携協定を締結した愛知県豊田市を皮切りに、香川県三豊市や北海道など、12の自治体と矢継ぎ早に連携協定を結んできました。
さらに、協定にいたらないまでも覚書を交わすなどして具体的な連携を始めている自治体は20に及んでいます。例えば愛知県みよし市では、児童発達支援事業所へ通う子どもたちの送迎を、スマホアプリで自宅近くまで呼び出せる利便性の高いサービスとして展開しています。また、2019年12月3日に包括連携協定を結んだ大阪府とは、2025年に開催予定の大阪・関西万博の会場である夢洲において、複合的な移動サービスの実現を目指す計画です。
単なる「移動手段の確保」だけにとどまらないのが、モネの真骨頂と言えるでしょう。2020年1月からは、長野県伊那市において移動診療の実証実験がスタートします。将来的には、車がやってくる場所にコンビニや外食店舗、さらにはオフィスやトイレといった機能までを移動させて展開する、まったく新しい街づくりの構想が進められているのです。
地方の赤字路線を救う!「人とモノ」を同時に運ぶ貨客混載の挑戦
地方における移動の課題に対して、モネは非常に現実的かつ革新的なアプローチを試みています。人口減少が進む地方都市では、利用者が限られるオンデマンド交通だけでは採算を合わせることが容易ではありません。そこで目をつけたのが、タクシー会社が乗客の輸送と同時に荷物の配送も引き受ける「貨客混載(かきゃくこんさい)」という画期的な手法です。
この人とモノの混載輸送については、長野県の小海町と南相木村において、2020年度以降に実証実験を行うことが計画されています。効率的に運行ルートを組み合わせることで、地方の交通網の維持と、物流網の確保を同時に達成するという非常にスマートな戦略です。こうした異業種を巻き込むネットワークとして設立されたコンソーシアムには、2019年11月末時点で約436社もの企業が加盟しています。
モネはすでに、具体的な動きを見せている地域以外にも、約360の自治体と導入に向けた話し合いを重ねているとのことです。「3年で100カ所の実証実験」という当初のシナリオを大きく上回るペースで、日本の移動革命は今まさに全国へ波及しようとしています。筆者は、この取り組みこそが少子高齢化が進む日本の地方を救う、最大の特効薬になると大いに期待しています。
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