家電量販界の勢力図が今、大きな転換点を迎えています。大手ビックカメラの2019年8月期における電子商取引(EC)売上高が、ついに1000億円という大台を突破しました。この躍進の裏側には、単にネット販売を強化するだけではない、実店舗を徹底的に活用する独自の「オムニチャネル」戦略が隠されています。
オムニチャネルとは、実店舗やオンラインサイト、SNSといったあらゆる販売経路を連携させ、お客様がどこでもシームレスに買い物ができる状態を指す言葉です。2019年秋に都内で開催された決算説明会にて、宮嶋宏幸社長は「白物家電を中心にEC需要は着実に伸びる」と強い自信を覗かせました。
2019年8月期のグループ全体でのEC売上高は、前期比25%増の1081億円に達しています。この数字は、業界トップを独走するヨドバシカメラを猛追する勢いであり、EC化率は12%にまで上昇しました。SNS上でも「ネット予約して店舗で受け取れるのが便利すぎる」と、その利便性を評価する声が相次いでいます。
利便性の向上は止まりません。2018年10月には堺市に新たな物流拠点を設け、関西圏での当日配送体制を整えました。さらに楽天とタッグを組んだ「楽天ビック」の展開により、これまで手薄だった女性層の取り込みにも成功しています。ネットとリアルの垣根を取り払う姿勢は、まさに現代の小売業が進むべき王道と言えるでしょう。
アマゾン・エフェクトという脅威に立ち向かう最新店舗の姿
宮嶋社長が警戒を強めるのは「アマゾン・エフェクト」です。これは巨大ECサイトの台頭により、既存の小売業が駆逐される現象を指します。配送スピードと価格競争力で勝るネット勢に対し、実店舗を持つ量販店は、人件費などの運営コストというハンデを背負いながら戦わなければなりません。
そこでビックカメラが打ち出したのが、店舗を単なる展示場(ショールーミング)にさせない仕掛けです。その象徴が、2020年度末までに全店導入を予定している「電子棚札」です。これは価格をデジタル表示する仕組みで、競合他社の価格変動に合わせて瞬時に値札を更新できる画期的なシステムとなっています。
2019年11月8日にオープンした所沢駅店などでは、この棚札にスマートフォンをかざすだけで、商品の口コミを確認できる機能を搭載しました。お店で実物を触り、ネットの評判を確認し、その場で注文して自宅に届けてもらう。こうした「良いとこ取り」の体験こそが、これからの店舗に求められる付加価値ではないでしょうか。
私が注目したいのは、このDX(デジタルトランスフォーメーション)が「接客」という人間味のあるサービスを強化する点です。値札の張り替えという単純作業から解放されたスタッフが、より専門的な商品説明に時間を割けるようになります。技術を人のために使うこの姿勢こそ、同社が業界の試金石となる理由だと言えます。
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