プロ野球界において、身長173センチメートル、体重83キログラムという体格は決して大柄とは言えません。しかし、オリックス・バファローズの吉田正尚選手(26歳)は、見る者の目を釘付けにする圧倒的なスイングを見せてくれます。体がねじ切れるほどの猛烈なスイングを武器に、2年連続で打率3割を達成した「小さな大打者」は、入団5年目となる2020年のシーズンに初の打撃タイトル獲得を力強く見据えているのです。
パ・リーグを見渡すと、福岡ソフトバンクホークスの柳田悠岐選手や、埼玉西武ライオンズの山川穂高選手、中村剛也選手など、球界を代表するスラッガーたちがしのぎを削っています。彼らはいずれも、外国人選手にも引けを取らない強靭な肉体の持ち主ばかりです。もし吉田選手が彼らのような豪快な振りを抑え、確実性を重視した打撃にシフトすれば、打率はさらに向上するかもしれません。それでも「これが自分のスタイル」と言い切る姿に、SNSでは「彼のスイングにはロマンが詰まっている」「小さくまとまらない姿を応援したい」と熱い声援が送られています。
2019年のシーズンは、埼玉西武ライオンズの森友哉選手と激しい首位打者争いを繰り広げ、わずか7厘差で惜しくも2位という結果に終わりました。西武がリーグ制覇を成し遂げた2019年9月24日の段階では、森選手が打率.329、吉田選手が打率.325と、その差はわずか4厘だったのです。その後、森選手が最終戦を欠場したのに対し、吉田選手は残りの4試合に出場を続けました。結果として打率を3厘下げてしまい、打率.322という悔しい形でシーズンを締めくくることになったのです。
しかし、この悔しさの中にも大きな誇りが隠されています。それは、2年連続で全143試合へのフル出場を果たし、きっちりと打率3割をキープした点です。シーズン最終盤の4試合でも、スタイルを崩さずにフルスイングを徹底し、28号、29号となる本塁打を放ってみせました。もしライバルが最後まで試合に出ていたらという仮定よりも、吉田選手は「森君は本当にすごい」と、過酷な捕手というポジションで優勝へ導いたライバルを称賛しており、そのスポーツマンシップには胸を打たれます。
外野手である吉田選手ですが、2019年シーズンは負担を軽減するために、3分の1近くの試合で「指名打者(DH)」としてスタメンに名を連ねました。これは、守備に就かずに攻撃のみに参加するポジションのことで、過去に彼を苦しめた腰痛への配慮から生まれた起用です。2016年に青山学院大学からドラフト1位で入団したものの、1年目は63試合、2年目は64試合の出場に留まっていました。若き天才の才能が開花したのは、2017年のオフに決断した腰の手術がきっかけだったと言えるでしょう。
手術の成功に加え、当時チームメイトだった糸井嘉男選手との合同自主トレーニングも大きな転機となりました。超人的な身体能力を持つ先輩の姿を間近で見たことで、強烈なスイングを支えるための肉体作りの重要性を再認識したのです。地道なトレーニングの成果により、今では故障への恐怖心は完全に払拭されました。ただ一つ物足りないのは、入団以来チームが上位争いから遠ざかり、クライマックスシリーズなどの緊迫した舞台をまだ経験できていないことではないでしょうか。
これまで打線の厚みに課題があったオリックスですが、2020年は大きな変革を迎えようとしています。福良淳一ゼネラルマネジャーが自らアメリカへ足を運び、実力を見極めたアダム・ジョーンズ選手とアリエル・ロドゲス選手という、実績十分な2名の右バッターを獲得したのです。強力な助っ人たちの加入により、マークが分散することは確実でしょう。左の吉田選手と彼らが形成する新生フルスイングトリオが、今シーズンのプロ野球界に嵐を巻き起こすに違いありません。
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