2018年6月27日、東京都議会において、受動喫煙(たばこを吸わない人が他人のたばこの煙を吸わされること)の害から都民を守るための画期的な「受動喫煙防止条例」が成立いたしました。これは、単に喫煙ルールを定めるだけでなく、2020年に開催を控える東京オリンピック・パラリンピックを「煙のない大会」にすることを強く意識した、国の規制よりもさらに一歩踏み込んだ内容となっているのが大きな特徴でしょう。特に、都内の飲食店に対する規制は厳しく、この条例によって都内の飲食店の8割以上が規制対象になると見込まれています。
この条例の核となるのは、2020年4月以降、従業員を一人でも雇用している飲食店の屋内を原則禁煙とする点です。規制対象となる店舗は、「全面禁煙」にするか、または飲食はできないものの喫煙専用の場所である「喫煙ブース」を設置し「全席禁煙」とするかの対応を迫られることになります。これまでの日本の喫煙文化を鑑みると、この大きな変更は、飲食業界に少なからぬ波紋を広げているようです。
この条例に対するSNS上での反響は、概ね二極化している状況が伺えます。非喫煙者や子育て世代からは「ようやく実現した」「健康被害の心配が減る」と歓迎の声が多数寄せられています。一方で、特に小規模な飲食店の経営者からは、「客足が遠のくのではないか」「喫煙ブースの設置費用やスペースの確保が難しい」といった、事業継続への懸念や具体的な対応の難しさを訴える声も少なくありません。多くの都民の健康を守るという大義と、喫煙者や飲食店の利便性のバランスをどう取るかという、難しい課題が浮き彫りになっていると言えるでしょう。
段階的な施行スケジュールと国の法律との違い
東京都の条例は、段階的に施行される計画が立てられています。まず、2019年9月にラグビーワールドカップ(W杯)の開催を前に、小・中学校、高校、病院といった特に公共性の高い施設の敷地内が禁煙となります。学校では、屋外であっても喫煙場所を設置することは認められないため、特に厳しい規制が敷かれています。そして、先述の飲食店への規制を含む全面施行は、いよいよ2020年4月から開始されます。この全面施行以降は、条例に違反した場合には、5万円以下の過料(行政上の義務違反に対する金銭罰)が科されることになります。
ここで特筆すべきは、国の「改正健康増進法」と、東京都の条例の規制内容の差です。国の法律も飲食店を原則屋内禁煙とするものの、業界への配慮から、個人経営や中小企業が経営する客席面積100平方メートル以下の店舗は規制の対象外としています。しかし、東京都の条例は、この規模による例外を設けず、従業員を一人でも雇っている店を一律で規制しているのです。これは、働く人の健康を守るという視点を重視し、国の規制よりも一段と強い姿勢で受動喫煙防止に取り組むという、都の強い決意の表れでしょう。
私見を述べさせていただきますと、非喫煙者が、職場で、あるいは食事の場で、他人の煙によって健康被害を受けるリスクを負うべきではないと強く考えます。もちろん、飲食店の経営や喫煙者の権利といった側面も理解できますが、今回の東京都の条例のように、従業員を雇用している店を一律で規制することは、労働環境の改善という意味でも非常に意義深いことだと評価できます。一時的に混乱が生じる可能性はありますが、長期的には、都民全体の健康増進と、より快適で質の高いサービスの提供につながる未来を切り開く一歩となることを期待しています。
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