ロックの歴史を語る上で決して外すことのできない伝説のギタリスト、ジミ・ヘンドリックス。彼の輝かしい活動期間は1966年から1970年までのわずか4年足らずでした。生前に発表されたアルバムもたったの4作品しか存在しません。その希少性も手伝い、彼の遺した音源は今なお世界中の音楽ファンを魅了し続けています。SNS上でも「4年しか活動していないなんて信じられない」「彼のギターは今聴いても新しすぎる」といった驚きとリスペクトの声が絶えず寄せられており、その求心力は衰えるところを知りません。
今回注目したいのは、彼が黒人プレイヤー3人で結成したグループ「バンド・オブ・ジプシーズ」による幻のライブです。この演奏は1969年12月31日と1970年1月1日の2日間にわたり、ニューヨークのフィルモア・イーストで計4回開催されました。しかし、1970年春に発売されたオリジナルのライブ盤にはわずか6曲しか収録されず、ファンの間では飢餓感が続いていたのです。その後もいくつかの編集盤が登場したものの、どれも部分的な記録に過ぎず、完全な姿を現すことはありませんでした。
そしてライブから半世紀という節目を迎え、ファン待望の決定版がついに登場しました。なんと4つのステージ、全43曲が5時間以上の大ボリュームで完全網羅されたのです。ネット上では「これこそが聴きたかった完全体だ」「半世紀を日常的に超えてくるタイムカプセル」と歓喜のコメントが溢れかえっています。元々はR&Bスターのバックバンドで鳴かず飛ばずだった彼が、イギリスへ渡って才能を開花させ、アメリカへ逆輸入される形でスターダムに駆け上がった物語の、まさに集大成がここにあります。
このバンドの魅力は、それまでのロック編成よりもはるかにファンキーでグルーヴィーな点にあります。ハードロックとファンクがこれ以上ない形で融合しており、後のプリンスをはじめとする無数のアーティストに決定的な影響を与えました。本作には「パワー・オブ・ソウル」といった当時の新曲から、お馴染みの名曲「紫のけむり」まで聴きどころが凝縮されています。ジャンルの壁を破壊していくダイナミックな演奏は、音楽の進化の瞬間を特等席で目撃しているかのような興奮をリスナーに与えてくれるでしょう。
アルバムのハイライトは、戦地の兵士に捧げられた名曲「マシン・ガン」です。ジミはギターの音量を最大にして音を歪ませ、当時の最先端エフェクターを駆使しました。ここで使われた「ファズ」は音を激しく歪ませる機材であり、「ワウワウ」は楽器に歌わせるようなうねりを与えるエフェクターです。さらに日本製の「ユニヴァイブ」という回路が、独特の回転するような揺らぎを音に付加しています。これらが混ざり合い、まるで音の万華鏡のような渦となって聴き手に降り注ぎます。
ドラムが激しく打ち鳴らされる中、ギターの爆音は爆撃や機銃掃射、そして戦場に響く叫び声さながらに響き渡ります。この圧倒的な表現力には、ジャズの帝王と称されるマイルス・デイビスさえも「自分がやりたかった音楽はこれだ」と周囲に漏らしたほどでした。実際にマイルスはこの後、ジャズにロックやファンクを融合させた革新的なスタイルへと突き進むことになります。一介のギタリストを超え、巨匠のクリエイティビティさえも刺激したジミの音楽は、まさに時代の特異点だったと言えます。
これほどまでの熱量を放ったバンドでしたが、活動期間は非常に短く、すぐに解散の道を歩むこととなりました。しかし、彼らが残した音楽の遺伝子は、現代のロックやブラックミュージックの中に確実に息づいています。リアルタイムの熱狂をそのまま閉じ込めたようなこの完全版は、当時の若者たちが感じた衝撃をそのまま体験させてくれる最高のタイムマシンです。今こそ、伝説のギタリストが鳴らした魂の爆音に、じっくりと耳を傾けてみてはいかがでしょうか。
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