アメリカの大リーグ(MLB)を揺るがす前代未聞のスキャンダルが、ついに最悪の結末を迎えました。MLB機構は2020年1月13日、ヒューストン・アストロズが組織的な「サイン盗み」を行っていたとする調査結果を公表したのです。これを受けて球団側は、ジェフ・ルノー・ゼネラルマネジャー(GM)と、チームを率いたA・J・ヒンチ監督の2人を即座に解任するという、極めて異例の厳しい決断を下しました。世界一の栄光に輝いた強豪チームの裏側で一体何が起きていたのか、その詳細が明らかになりました。
今回の調査によって、アストロズが球団史上初のワールドシリーズ制覇を成し遂げた2017年から2018年のシーズン途中にかけて、不正な行為が常態化していたことが断定されています。処分として、両指揮官には2020年シーズン終了までの職務停止が科されました。さらに球団に対しては、MLBの規定で最高額となる500万ドル(日本円で約5億5000万円)の罰金に加え、2020年と2021年のドラフトにおける1巡目および2巡目の指名権を剥奪するという、将来のチーム作りを大きく揺るがす猛烈なペナルティが下されています。
ここで気になるのが、そもそも「サイン盗み」とは何なのかという点でしょう。野球におけるサイン盗みとは、相手チームのキャッチャーとピッチャーが交わす球種のサインを、何らかの方法で盗み見てバッターに伝達する行為を指します。実は、人間の目による偶然の読み取りは「野球の駆け引き」として黙認される傾向にありましたが、今回アストロズが手を染めたのは、最先端の電子機器を悪用した明らかなルール違反でした。
その具体的な手口は、驚くほど組織的かつ原始的なものでした。アストロズは球場の中央に設置されたビデオカメラで相手キャッチャーのサインをのぞき見し、ベンチ裏のモニターで確認していたのです。そして変化球やストレートといった球種に応じて、ベンチ脇にあるごみ箱を叩く回数を変え、バッターに音で伝えていました。この不正には野手の大部分が関与しており、当時ベンチコーチだったアレックス・コーラ氏と選手たちが主導していたと結論づけられています。
一方で、今回の処分において実際のプレイヤーたちが誰一人として処分されなかったことに対し、野球界やSNS上では大きな議論が巻き起こっています。インターネット上では「選手が主導したのに、お咎めなしなのは納得がいかない」「過去のタイトルを剥奪すべきだ」といったファンからの怒りの声が噴出しました。ファンの信頼を裏切る行為に対して、より厳格な姿勢を求める世論が強まっています。
ロブ・マンフレッド・コミッショナーは、選手にルールを遵守させるのはGMと監督の責務であると強調しました。しかし、編集者の視点から言わせていただければ、この処分だけではファンが受けた失望を拭い去ることはできないと感じます。いくら勝利のためとはいえ、スポーツの根幹である「公平性」を汚した代償はあまりにも大きすぎます。今回の厳罰を機に、MLB全体がクリーンなエンターテインメントへと生まれ変わることを切に願ってやみません。
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