2020年01月08日、ロンドンにある英国首相官邸の暖炉が温かく燃える応接室で、ある劇的な出会いがありました。イギリスのボリス・ジョンソン首相が、欧州連合(EU)の新たな顔であるウルズラ・フォンデアライエン欧州委員長を笑顔で迎えたのです。実はこの2人、幼少期にブリュッセルの同じ学校に通っていたという驚きの共通点を持っています。昔話に花を咲かせ、一見すると和やかなムードで始まった会談でしたが、本題の「ブレグジット」へ移った瞬間に空気は一変しました。
ブレグジットとは、イギリスがEUから離脱することを指す言葉です。2020年01月末の正式離脱がいよいよ確実となり、世界中がその行方に注目しています。しかし、本当に大変なのはここからです。激変を和らげるために2020年末まで設定された「移行期間」の間に、両者は貿易などのルールを決める自由貿易協定(FTA)を結ばなければなりません。もし合意できなければ、関税が復活して経済が大混乱する「合意なき離脱」と同じ状態に陥るリスクを孕んでいます。
交渉期間は最長で2022年末まで延ばせる仕組みですが、ジョンソン首相は「絶対に延長はしない」と強硬な姿勢を崩しません。一刻も早く移民の流入を抑え、EU以外の国々と新しい貿易の約束を交わすことで、離脱のメリットを国民に証明したいという狙いがあるのでしょう。2019年12月の総選挙で大勝した勢いを味方に、EUから譲歩を引き出すためのプレッシャーをかけているとも言えます。この豪腕ぶりには、政治のスピード感を評価する声が集まっています。
これに対してEU側は、わずか1年足らずで複雑な貿易のルールをまとめるのは不可能だと冷ややかな視線を送っています。フォンデアライエン氏は厳しい表情で「2020年末まででは時間が短すぎる」と指摘し、都合の良い条件だけを求めるイギリスの楽観論を強く牽制しました。SNS上でも「たった1年でFTA合意なんて無理ではないか」「世界経済へのダメージが心配すぎる」といった、現実的な先行きを不安視する一般ユーザーの書き込みが急増しています。
これまでEUに主導権を握られがちだったイギリスですが、ジョンソン首相は国内の体制を強引に作り変えて逆転を狙っています。2020年01月09日に下院を通過した離脱関連法案では、なんと「議会の承認を必要とする」という条項が密かに削除されました。かつてのメイ前首相が議会の反対に遭って迷走した反省を生かし、官邸主導で一気に突き進む覚悟です。民主的な手続きを軽視しているようにも見えますが、この決断力こそが今のイギリスに必要だという見方もできます。
しかし、この強引な手法は足元での摩擦を生んでいます。2019年12月には、政府の方針を信頼できないとしてベテラン外交官が辞職していたことが発覚しました。さらにEU側でも、大国であるイギリスが抜けることで年間120億ユーロ、日本円で約1.5兆円もの大金が不足するという財政問題が浮上しています。負担が増えるドイツのメルケル首相も頭を抱えており、ブレグジットがもたらす亀裂は、国家のリーダーから現地で暮らす一般市民の生活に至るまで、深く影を落としています。
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